交通事故の減少や渋滞の緩和がメリットとして挙げられることが多い「自動運転技術」。公共交通で導入すれば、さらにさまざまな効果が見込まれる。そのため、バスやシャトルと自動運転技術は、非常に相性が良い。
■省人化による人的コストの削減
効果の1つとしては、省人化による人的コストの削減が挙げられる。バスが自動運転化すれば、運転手が不要になる。遠隔監視や遠隔サポートを行う担当者は必要となるが、1人が複数台の自動運転バスを担当すれば、運転手を確保するよりも人手は少なく済む。
ただし、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)までは、車内に運転手もしくは安全要員(セーフティドライバー)が同乗する必要があるため、省人化によって人的コストの削減が可能になるのは、レベル4(高度運転自動化)の技術が搭載されるようになったあとだ。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義・呼称・基準は?」も参照。
また、バス事業者はこれまで運転手を確保する際、大型自動車第二種免許などを保有する人材を確保する必要があったが、バスの自動運転化が実現できれば、こうした特別な資格を持った人材を確保する必要がなくなることも大きい。
■元運転手が別な業務に従事できる
先ほど説明した点と少し見方を変えれば、運転手だった人が運転以外の別な業務に従事できるようになる、とも言える。運転業務に拘束されなくなるからだ。
バスを利用する高齢者や障がい者のサポートといった役割を担えば、バスの利用者の満足度を向上させることにつながる。バスの中で地域交通の案内係や観光ガイドになるというのもありだ。
■ニーズさえあればいつでも運行可
運行に運転手が必要なくなると、バス事業者は顧客の利用ニーズに合わせ、バスによる運行サービスを柔軟に提供しやすく点も特筆すべき点だ。利用ニーズがあり、採算がとれそうであれば、「運転手がいない」という理由でサービスの提供を断念しなくてよくなる。
■【まとめ】いずれメリットを享受できる段階に
すでに日本国内では自動運転バスの実証実験が盛んに行われており、実用化・有料化の事例も出てきている。
自動運転レベル4での運行はまだ完全には実現できてはいないが、技術レベルが上がり、法律の整備も進めば、この記事で挙げたようなメリットを享受できる段階にくる。
自動運転バスの実用化に関する動きに、引き続き注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転バス実証、自己位置推定で「GNSS/GPS」使用が最多」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)