英国の運転手組合「ベーシックインカム」要求 ロボタクシーで失職危機

労働組合、配車アプリ企業に提案



英国の配車ドライバーなどで構成される労働組合「App Drivers and Couriers Union(ADCU)」は、自動運転車の普及によって仕事を失う可能性があるドライバーに対し、生涯にわたるベーシックインカムの支給を求めている。


財源については、配車アプリ企業や自動運転車の運行事業者が負担すべきだと主張している。自動運転技術の発展によって雇用が脅かされるなか、労働者の生活をどのように保障するかが課題だ。

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■ADCUが「失業リスク」に警鐘

提案は、自動運転車の導入によって影響を受ける配車ドライバーへの所得保障を柱とするものだ。ここでいう配車ドライバーとは、アプリなどを通じて乗客から予約を受け、指定された場所まで迎えに向かう運転手を指す。

配車サービスを支える労働者であり、自動運転車が普及すれば、従来の仕事が減少する。同組合は、英国政府や規制当局、配車アプリ企業が、ドライバーの生活を守るために十分な対応を取るとは信頼できないと主張している。

そのため、職を失ったときの一時的な支援ではなく、生涯にわたって平均収入の全額を補償する水準のベーシックインカムを求めている。


欧州進出も進めているGoogle系Waymo=出典:Waymoプレスリリース

■なぜ生涯にわたる所得保障が必要?

ADCUが長期的な所得保障を求める背景には、配車ドライバーが再就職する際に直面する困難がある。

同組合によると、所属するドライバーの大半は40歳を超えており、英語を母語としない人も多いという。自動運転車の普及によって仕事を失った場合、年齢や言語の壁などから、条件に合った別の仕事を見つけることが難しくなると懸念している。

ADCUは、履歴書の書き方講座や職業訓練、就職相談といった一般的な再就職支援だけでは不十分だと指摘。求めているのは、従来の収入を補い、生活水準を維持できる所得保障だ。

同組合は、こうした支援を「公正な移行」の中核に位置づけている。技術革新によって企業が利益を得る一方、労働者だけが失業や収入減少の負担を負う状況を避けるべきだという考えだ。


■年間給付費用は約6,300億円に

ADCUは、ロンドンで認可を受けている民間ハイヤー運転手11万3,166人全員が、失業後に英国の公的給付制度「ユニバーサル・クレジット」を申請する事態になれば、年間の社会保障給付費は30億ポンド(約6,300億円)近くに達すると試算している。

さらに、運転手の収入減少額は34億ポンド(約7,100億円)、税収の減少額は約680万ポンド(約14億円)になると推計した。ただし、これらは同組合が想定するシナリオに基づく試算であり、確定した将来予測ではない。

同組合は、英国で自動運転車の運行許可を受けた企業が資金を拠出する「公正な移行基金」の設立や、ロンドンでの新規の民間ハイヤー車両ライセンス発行の即時停止も要求している。

こうした主張の背景には、自動運転技術による利益を得る企業が、雇用への影響に伴う社会的な費用も負担すべきだという考えがある。

■どうなる「労働者保護のあり方」

ADCUの要求は、自動運転車の普及によって仕事を失う可能性がある配車ドライバーの生活を、誰がどのように支えるべきかという問題を浮き彫りにしている。

英国での議論は、今後の自動運転社会における労働者保護のあり方を考えるうえでも注目される。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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