2019年3月期に向け、過去最高額相当の1兆800億円の研究開発費を計上したトヨタ自動車。自動運転をはじめとした技術開発に力を注ぐ裏側では、無駄やコストを抑え、広告・販売費を削る方針も打ち出している。その一方で、約20兆円に上る内部留保を積み上げてもいる。内部留保は自由に使えるものではないにしろ、研究開発や設備投資にもっと回せないのだろうか。
狭義の内部留保にあたる利益剰余金の推移を見てみると、2013年3月期が12兆6892億円、2014年3月期が14兆1163億円、2015年3月期が15兆5919億円、2016年3月期が16兆7942億円、2017年3月期が17兆6010億円、そして2018年3月期が19兆4735億円となっている。5年間で6兆7843億円の増、1年あたり単純平均すると1兆3569億円ずつ積み上げている計算になる。
この額は、トヨタの毎年の研究開発費をしのぐ。であるならば、広告費や販売費を削らずとももう少し内部留保を研究開発につぎ込んでも良いのではないか?——という考えがどうしても浮かんでくる。
【参考】トヨタの経費削減については「トヨタ、販売・広告予算削減へ 自動運転開発へ注力|自動運転ラボ
もちろん、内部留保の全てが流動性のあるものではなく、キャッシュフローを見ると、2018年3月期の「現金及び現金同等物」期末残高は3兆523億円となっている。流動負債は17兆7969億円、総資産は50兆3082億円で、当座比率は17.15%と決して高水準ではなく、同等物含む現金の残高はむしろ少ないとも言える状況で、この点を踏まえると残念ながら黙らざるを得ない。
内部留保金をどう使うか…。100年に1度の変革期を勝ち抜くために、豊田章男社長の決断には重責がのしかかっていると言えそうだ。
【参考】トヨタの2018年3月期の決算発表については「【速報】トヨタ決算発表、豊田社長「”自動車を作る会社”から”モビリティカンパニー”に」|自動運転ラボ