自動車の世界ではいままさに自動運転技術の開発競争で各社が火花を散らしているが、鉄道では一部路線では既に自動運転が実用化されている。今回は鉄道の自動運転システムに目を向けてみよう。
自動車と同じように、鉄道も自動化の段階によって自動運転レベルが定義されている。GoA (Grades of Automation)と呼ばれる規格でレベル0〜4に分けられ、運行の方法や搭乗する乗員の条件なども定められている。
【参考】関連記事としては「「無人電車」が実現済みの路線まとめ 自動運転技術、早期から導入」も参照。
記事の目次
■GoA0(レベル0):目視運転
「レベル0」はすべての操作を運転士が担い、自動運転システムは一切搭載されない段階。代表的なレベル0としては、路面電車などのローカル線などが挙げられる。
■GoA1(レベル1):非自動運転
「レベル1」は、発進・停止や加減速などの操作はすべて運転士が担うが、速度超過時の自動減速や事故発生時の自動停止といった運転支援機能を搭載している段階。
ただこのレベルでは運転士と車掌が乗るので省人化の効果はなく、あくまで安全支援機能という位置付けだ。踏切がある一般的な路線に導入されているため、普段目にする電車の多くはこのレベル1と言える。
■GoA2(レベル2):半自動運転
「レベル2」からは一部の操作が自動化される。運転士が担う操作は基本的にはドアの開閉と発進のみで、発進後の速度調整や駅での停車はすべてシステムが担当する。ただし、トラブルが発生した緊急時は手動運転に切り替え、運転士が停止操作をして避難誘導する。
このレベルから車掌の搭乗が不要になり、運転手が車掌業務を兼任する「ワンマン運転」が可能になる。導入されているのは「丸ノ内線」や「南北線」などの、踏切がなく、人や車が侵入しない地下鉄がメイン。
■GoA2.5(レベル2.5):添乗員付き自動運転
「レベル2.5」はレベル2とレベル3の中間として定義されているレベルで、添乗員のみで運行することができる。添乗員は緊急停止操作と避難誘導のみを担当する。
■GoA3(レベル3):添乗員付き自動運転
「レベル3」では、車両の発進・停止や加減速などすべての操作はシステムが自動で行い、ドアの開閉のみ人間が担当する段階。添乗員は運転士である必要はなく、緊急時の停車もシステムが自動で行い、避難誘導のみ実施する。千葉県のモノレール路線である舞浜リゾートラインなどがこの段階だ。
■GoA4(レベル4):自動運転
「レベル4」では係員が乗車する必要がなく、完全無人で運行が管理される。まだ導入している路線は少ないが、日本国内ではゆりかもめや神戸新交通などの新交通システムがレベル4を達成している。
■【まとめ】鉄道の自動運転普及は安全性の確保がカギ
2019年現在、踏切がある一般路線では安全性の面から完全な自動運転は導入されていない。少子高齢化による労働力不足などの課題に対しては鉄道の自動運転化による省人化の寄与度は大きく、今後普及に向けた取り組みが進んでいく。
ただ2019年6月に発生したシーサイドラインの自動運転事故などもあり、原因が自動運転システムにあったかないかは別として、踏切がある一般路線での自動運転を人々が今後どれだけ受容できていくのかについても、注目してウオッチしていきたい。
【参考】関連記事としては「自動運転の「シーサイドライン」、勝手に逆走 骨折の重傷者6人、ATOで制御」も参照。