「タクシー料金ってこんな簡単に変えていいんだっけ?」——。新興のタクシー配車サービス事業者が「金土は初乗り無料」(DiDiモビリティジャパン)や「0円タクシー」(DeNAのMOV)などと奇抜で大胆な異例のプロモーションを打ち出す中、自動運転ラボの記事にこんな疑問が投げかけられた。
確かにタクシーの料金については現在、各タクシー事業者は国土交通相が指定する「公定幅運賃」(2014年導入)の範囲内で運賃を定めなければならない、というルールがある。その運賃は事前に国交相に届け出る必要があり、国側は各事業者が運賃をいくらに設定しているのか把握している。
そんな中、タクシー料金を「変更」するこうしたプロモーションは違法ではないのか、ということに疑問が上がっているわけだ。
■関東運輸局「法的に問題はない」
自動運転ラボは関東運輸局に問い合わせを行った。同局の管轄である東京都では、DeNAが12月に0円タクシーを走行させている。取材ではこの例について詳しく聞いた。
関東運輸局の担当者は取材に対し、「DeNAのプロモーションは法的には問題がない」と説明。「DeNAの場合はタクシー会社と運送契約を結んでおり、DeNAが時間貸しでタクシー会社に運賃を支払っている形」だという。時間貸し運賃は公定幅内であることから、適法なプロモーションとして捉えて差し支えないようだ。
自動運転ラボは2018年12月5日に東京都内で行われたDeNAの0円タクシーに関する記者会見でも、同社の自動車事業を束ねるオートモーティブ事業本部長の中島宏執行役員に話を聞き、「法的に認められている立ち位置で実施していることで、全く問題がないです」という回答を得ている。
【参考】関連記事としては「【速報】DeNA、東京で「0円タクシー」の運行開始 広告宣伝費活用して乗車料金無料に 配車アプリの認知向上へ」や「究極の形から始める…DeNAの0円タクシー、会見後に語られた真の狙い」も参照。
■「違法性」についてしばしば照会あり
今年になってタクシー配車アプリの新規参入が続く中、関東運輸局の担当者によるとこうした点で違法性がないかの照会がしばしば来るようになっているようだ。金土初乗り無料タクシーや0円タクシーなどに続くプロモーションを他社が実施することを予感させる。
一方で、こうしたプロモーションはタクシー事業者が単独で行うのは難しいようだ。運転手が直接乗客から運賃を受け取る場合は、公定幅運賃の範囲を逸脱するものであってはならない。つまり、乗客でも事業者でもないプラットフォーマーのように柔軟な「価格設定」をタクシー事業者が単独で実施することは難しいということになる。
日本国内では、ソフトバンク陣営のDiDiモビリティジャパンとウーバーのほか、ソニーが主導する「みんなのタクシー」やDeNAなどが、複数のタクシー事業者と手を組んだプラットフォーマーとして配車サービスを手掛ける。そして今後、タクシー会社の囲い込み合戦とアプリユーザーのシェア獲得合戦は一層激しさを増す。
そんな中、法的な問題がない範囲内でのプロモーションは、より多様な形でブランディングやマーケティングの手法として各社が展開していくものと思われる。金土初乗り無料タクシー、0円タクシー……。次はどんな奇抜なアイデアが登場するのだろうか。
【参考】関連記事としては「【最新版】タクシー配車アプリや提供企業を一挙まとめ 仕組みも解説」も参照。