自動運転では、人や自動車などの移動データを共有することの重要性が広く認められているものの、統一的なデータ形式がなかった。
そんな中、産業技術総合研究所(産総研)人工知能研究センターと日立製作所が、人や自動車などの「移動体」の位置情報の時間変化を表す「OGC Moving Features Encoding」を拡張した新たな移動体データ形式「MF-JSON形式」を地理空間情報の国際標準化団体「OGC」に共同提案し、国際標準仕様として採択された。
■MF-JSON形式を開発した背景は?
これまでは移動データの標準的な交換形式がなかったため、システム間の連携が問題となっていた。国際標準化機構ISOによる国際標準規格はあったが、実用的なデータ交換には向いていなかった。
そこで産総研は、2016年に日立などが設立したOGCの「Moving Features Standards Working Group」に参画し、移動データに関する国際標準仕様の開発に取り組んできた。
今回開発されたMF-JSON形式は、すでにOGCで採択されていた「XML形式」よりもデータ記述が簡単で、「CSV形式」よりもさまざまな移動体を記述できることが特徴のようだ。
■MF-JSON形式は2つの形式で構成
MF-JSON形式は、GPS(全地球測位システム)から提供される点形状の0次元移動体の単純な移動データを記述する「MF-JSON Trajectory形式」と、さまざまな形状の移動体の複雑な動きの移動データを表現できる「MF-JSON Prism形式」の2つの形式から構成されている。
前者のMF-JSON Trajectory形式は、地理空間情報分野でオープンなデータ交換形式として一般的な広く利用されている「GeoJSON」を拡張し、時間変化の記述を可能としたデータ表現仕様だ。
一方、MF-JSON Prism形式は、高さを含むさまざまな形状の動きを記述できる新たなデータ形式だという。例えば、立体形状の3次元CADモデルや自動運転技術に必要な3次元LiDARデータなどの向きを含む動きなどが記述できる。
この両方の形式を組み合わせることで、より精緻な3次元時空間データやその動きの表現を必要とする自動運転などの分野で、移動データの利活用がしやすくなるという。
■【まとめ】業界の発展に資するもの
自動運転の開発・発展において、移動データ形式の標準化は非常に重要なことだ。今回の国際標準仕様としての採択は、業界の発展に資するものと言えよう。
【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)