群馬県と群馬大学、関越交通が2019年12月12〜25日まで、県内の公道で路線バスの自動運転実証を実施する。路面に設置する磁気マーカーを使う「路車間協調技術」による自動運転となり、GPS(全地球測位システム)の受信状況に影響を受けずに走行が可能なことが特徴だ。
実証実験はバス停の「群馬大学荒牧」と「渋川駅」を結ぶ約8.7キロのルートで実施する。基本的に完全自動運転となるが、緊急時にはバスに同乗するドライバーが対応する形をとる。安全に配慮するためだ。
またルート間には信号があるが、この信号が「赤」か「青」かなどの情報を通信で取得する形で実証実験が実施される。カメラで信号の色を識別して自動運転システムに伝えるよりも、この方が精度が増すという特徴がある。
また、自動運転バスが近づいたことを通知する「情報板」も設置することで走行情報が周囲から分かるようにし、そのことによって自動運転バスに対する社会受容性(アクセプタンス)などを向上させることもねらう。
■磁気マーカーを使った自動運転方式が採用されるわけ
今回の実証実験ではこのように磁気マーカーや通信によって信号情報の取得する技術が活用される。こうした方法を選ぶ背景の一つには、バスの自動運転化の実現・普及にかかるコストが安いことがある。
自動車が路車間通信などを行わずに単体で自立的に自動運転をするためには、走行ルート選びのための自車位置特定技術や信号の状態を取得するための画像認識技術などの研究コストが高くなる。電車のようにルートが確定している路線バスでは、磁気マーカーによる自動運転が相性が良いという側面もある。
こうしたメリットや特徴があるため、磁気マーカーなどを使った自動運転技術は、公道をどこでも走行可能な完全自律型の自動運転技術と並行して開発されているのがいまの状況だ。
【参考】関連記事としては「走行ルートに磁気マーカー埋設!羽田空港で自動運転バス実証 レベル3搭載」も参照。
■CRANTSとNECによる「適応ネットワーク制御技術」の検証も
ちなみに今回の実証実験では、群馬大学の次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS)とNECが、通信が混雑した状況下でも安定的な通信を可能にする「適応ネットワーク制御技術」の検証も実施する。両者が共同研究契約を締結し、実施する形だ。
従来、ネットワークが混雑した状況では通信遅延が発生する場合もあったが、この技術を導入することで映像をリアルタイムに送信することが可能になることが期待される。
なぜこうした技術が必要かというと、自動運転車が故障したときや緊急時などには走行場所から離れた管制センターから車両を遠隔制御する必要があるからだ。NECが公道実証で適応ネットワーク制御技術の検証を行うのは初めてのことだという。
■【まとめ】実証実験の成果に注目
こうした先進的な取り組みの実験が今回群馬で行われるわけだが、最近群馬は自動運転で注目を集めつつある。例えば前橋市では自動運転バスの走行実験が過去に実施され、実際のバスの営業路線で運賃を受け取る形での実証が全国に先駆けて行われた。
桐生市では2018年10月15日から2019年3月末までの期間、大型・中型・小型自動車の自動走行の実証実験が実施されている。
自動運転領域において群馬県が存在感を高めることについては、群馬大学のCRANTSによる貢献も大きい。CRANTSは自動運転レベル4(高度運転自動化)の社会実装に向けて技術開発などに取り組んでおり、群馬県内かどうかを問わず全国各地の実証実験で名前がたびたび登場する。
そんな群馬県での今回の実証実験ではどのような成果が挙げられるのか、引き続き注目していきたい。
【参考】関連記事としては「自動運転で存在感!群馬大学の取り組みまとめ」も参照。