日本には四季がある。そして今は冬だ。北海道や東北地方などでは除雪がしっかりされていない道路などで道がざくざく状態となり、タイヤが埋まってなかなか抜け出せないことが少なくない。
こうしたときはアクセルとブレーキを微妙に調整しながら、場合によってはタイヤと雪の間に「脱出プレート」を挟んで抜け出すことを試みる。ただそのアクセル具合やブレーキ具合はなかなかのコツが必要で、初めてこうした状態に陥った人はそこから抜け出すのに時間を要することも多い。
ここで一つ、考えてもらいたいことがある。それは、将来的にハンドルやペダル類が無くなる自動運転車が普及したら、雪道にはまった状態から抜け出すにはどうすれば良いか、という点だ。
■レベル5になるとハンドルやペダル類が無くなるかも
日本では今年4月に改正道路交通法ち改正道路運送車両法が施行され、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)が解禁される。そしてその次はいよいよ「自動運転レベル4」(高度運転自動化)だ。レベル4以上になると、自動運転システムを稼働中は緊急時であっても人が運転を代わることが想定されなくなる。
自動運転レベル4ではシステムを稼働できるエリアが限定されるが、自動運転レベル5になると「いつでもどこでも」自動運転システムを稼働できるようになり、ハンドルやペダル類を搭載しない車両が登場することが予想される。
「無くさずつけておけばいいのでは」と思う意見ももちろんあるが、ハンドルやペダル類を無くすことで車室デザインが自由になり、人がより快適に車内で過ごせるようになるというメリットがある。また人間が絶対に運転しなければガラスから外が常に見える状態でなくてもよく、窓ガラスのディスプレイ化も可能だ。
ただ前述の通りハンドルやペダル類がないと、雪道ではまったときに人間の運転操作によってそこから脱出することができない。自動運転システムに脱出機能を持たせるのもハードルが高い。雪道ではまった状態での脱出は、そのケースによって求められるアクセル操作などが非常に異なるからだ。
ではどうすれば良いのか。
■解決策は唯一「JAFを呼ぶ」ということだけ?
解決策はただ一つだと思われる。それは「JAF」などのロードサービスに頼むということだ。
管制センターに乗っている人が電話し、遠隔制御でそこから抜け出すようクルマを操作するという方法もあるが、一定程度の危険を伴う。雪とタイヤの間にかませたプレートが勢いよく飛びだし、人に激突する可能性があるからだ。こうしたリスクのある作業は、遠隔制御では難しいと思われる。
もしくは、単純に車両を押すことによって脱出を試みるのであればハンドルもペダル類もいらないため、周りにいる人に助けを求めるケースが増えるかもしれない。ただ周りに人が多い道で雪道にはまるとは限らない。そう考えれば、やはりロードサービスの重要性は増すだろう。
自動運転時代になるとさまざまな変化が訪れる。こうした点もその一つだ。もちろん何か別の解決策が生み出されるかもしれないが、「自動運転車×雪道」はなかなかハードルが高いものの一つだ。
【参考】関連記事としては「JAFが自動ブレーキ検証を実施 将来はAI自動運転の試験もする?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)