自動運転車が歩行者に「次の行動」を伝えることは、事故を未然に防ぐためにも大事なことだ。
手動運転の場合は、運転手の身振りや手振り、アイコンタクトなどが、次の行動を伝える役割を果たしているが、自動運転車の場合は運転手がいない。そのため歩行者とのコミュニケーション方法として現在検討されているのが、「光」「文字」「音声」「バーチャルアイ」などを使う方法だ。
■文字や音声を使う方法
ライドシェア大手のサービスの米Lyftは、自動運転車から歩行者へ文字や音声でメッセージを伝える技術を考案し、2018年12月に「Autonomous Vehicle Notification System」として米特許商標庁に登録されている。
報道などによれば、歩行者や自転車、ほかの自動車などの位置と種類を識別し、その識別結果に基づいてメッセージを対象物へ伝える仕組みのようだ。
具体的には、文字で伝える場合は外向きの車載ディスプレイを使い、音声で使える場合は車載スピーカーを使う。対象物の位置に応じて、文字を表示するディスプレイや音声を出すスピーカーを変えられるようだ。
Googleも類似の特許を取得しているとされており、自動運転車において「文字+音声」は現在有力なコミュニケーションの方法の1つとして認識されている。
■文字とイメージを表示する方法
米Appleが2018年10月に米特許商標庁へ出願した技術は、2021年8月31日に「Exterior Lighting and Warning System」として登録された。
この技術では、自動運転車の動きを文字やイメージで専用装置に表示して歩行者らに伝える。表示するための専用装置は、車体外側の正面や側面、背面、リアウィンドウの内部などに設置することを想定しているようだ。
文字の場合、表示部分の一部が雪や汚れなどで見えないと、読み間違いなどが起きる可能性がある。一方、イメージでは一部が見えなくてもそうした誤解は生まれにくいため、イメージも有力なコミュニケーション方法と考えられる。
■光のサインで意図を伝える方法
光の点灯パターンなどで自動運転車の意思を使える方法も模索されており、実際に開発例も多い。そんな中、大手自動車メーカーの米フォードは、自動運転車が提示する世界共通の光のサインのルールを作ることを自動車メーカーなどに呼びかけている。
フォードが統一のルール作りを呼び掛けている理由は、各社がバラバラの光のサインをつくると、歩行者が混乱してしまうからだ。統一規格を作るためには、自動車メーカーや国の垣根を越えた連携が必須となる。
【参考】関連記事としては「光のサインやバーチャルアイ…自動運転車と歩行者は、どう意思疎通をすべき?」も参照。
■バーチャル・アイを使う方法
英自動車メーカーのジャガー・ランド・ローバーは、自動運転車の車両の前方に2つのバーチャル・アイをつけ、歩行者と円滑にアイコンタクトが取れるか過去に実証実験を行っている。
このバーチャルアイはアニメのキャラクターのようなユニークな見た目が特徴で、認知心理学者の協力のもと開発を進められたという。
【参考】関連記事としては「イギリス・ジャガーランドローバーの自動運転車、歩行者と「アイコンタクト」 不安軽減へ導入実験」も参照。
■【まとめ】主流になるのはどの方法?
文字やイメージ、光やバーチャルアイ……。どのコミュニケーション方法が今後主流になっていくだろうか。
光のサインは、完全に万人の共通認識となるまでは誤解などが多く生じそうだが、コスト的には最も安上がりな方法と言えそうだ。バーチャルアイというユニークなアイディアもあったが、車両が極端なデザインとなるため、あまり広まらない気もする。
引き続き、各社の取り組みに注目していきたい。
【参考】関連記事としては「自動運転、「路上駐車」が最大の障害!手動介入の要因で首位」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)