全日本空輸(ANA)と豊田自動織機は2021年3月29日から4月2日の5日間、新開発の自動運転トーイングトラクターを使い、貨物搬送を想定した実証実験を羽田空港の制限区域で初めて実施する。
トーイングトラクターは貨物を搭載したコンテナをけん引する車両のことで、空港内で手荷物や貨物のコンテナ、パレットなどを運ぶ役割を果たす。両社は生産年齢人口の減少に伴う労働力不足などに対応するため、2025年に自動運転レベル4相当の無人搬送の実現を目指している。
■最大時速15キロで走行、高精度な自己位置推定性能
今回の実証実験では、自動運転トーイングトラクターが羽田空港制限区域内の1周約3キロの距離を最大時速15キロで走行する。
使用する車両は豊田自動織機が開発した。報道発表によれば、取り扱い貨物が多く走行条件の厳しい羽田空港での運用に対応するため、高精度な自己位置推定性能を備えており、けん引重量の増加や坂路走行にも対応可能な走行性能を誇っているという。
今回の実証を通じ、大規模空港における運用面での課題を抽出し、2021年10月からの実運航便での試験運用へとつなげていくという。
■中部国際空港や九州佐賀国際空港でも過去に実証実験
ANAと豊田自動織機による今回のような取り組みは初めてのことではない。
2020年2月には、中部国際空港でSIMAI社製トーイングトラクターを使用し、往復約2.4キロの走行ルートで実証実験を行った。障害物の未検知はなく、走行制御も良好で、実証全体を通じて大きな問題はなかったようだ。
また、2020年9〜10月には九州佐賀国際空港でも実証実験を行い、実際の手荷物搬送のオペレーションで自動運転トーイングトラクターを使用している。
【参考】関連記事としては「あなたの手荷物を自動運転で!佐賀空港での搬送実証、ANAと豊田自動織機が発表」も参照。
■【まとめ】ANAとJALが競いあうことで革新は加速する
一方、ANAのライバルとも言える日本航空(JAL)は、日本の航空会社として初めて手荷物搬送用の自動運転トーイングトラクターを成田国際空港で導入することを2021年3月2日に発表している。
日本を代表する2社の航空会社が競うように自動運転トーイングトラクターの取り組みを進めていることは、業界全体にとってとても良いことだ。競い合ってこそ、技術やサービスの革新はより早いスピードで進む。
これからもANAそしてJALの自動運転トーイングトラクターの取り組みに注目していきたい。
【参考】関連記事としては「手荷物搬送×自動運転、「日本初」はJAL!ANAも負けず劣らず取り組み加速」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)