ロボタクシーが連邦調査へ。監視員も止めなかった謎

安全監視員が同乗するも止められず

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Uberのロボタクシーが16件の事故を起こし、米国の連邦当局に調査された。しかもその全件に、異常を察知してハンドルを握るべき「安全監視員」が同乗していた。それでも16件中15件は誰も止めなかった。

2026年5月6日、NHTSAがUberのロボタクシーパートナー「Avride(アブライド)」の自動運転システムについて予備評価調査を開始。ダラスとオースティンで4カ月間に起きた16件の事故を受けた措置で、NHTSAは映像を確認した上で「過度な積極性と不十分な能力(excessive assertiveness and insufficient capability)」と異例の率初な言葉で批判した。

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■Avride社のロボタクシーが連邦調査へ

NHTSAが調査を開始したAvride社のロボタクシーは、ヒョンデ IONIQ 5にAvride自動運転システムを搭載した完全電動車両だ。2025年12月にUberアプリと統合する形でダラスで商業サービスを開始し、ダウンタウン・アップタウン・タートルクリーク・ディープエルムを含む約9平方マイルのエリアで運行している。

NHTSAが確認した映像には、隣接車線を走る車の進路へ車線変更する動作、前方の低速・停止車両を回避できない状況、部分的に路上を塞いだ障害物への接触が記録されていた。事故は2025年12月から2026年3月にかけてダラスとオースティンで16件発生し、少なくとも9件がダラスでの事案だ。大半が時速20マイル以下の低速での物損事故だが、1件は軽傷(入院不要)を伴った。

NHTSAは今回の調査対象として「conflict avoidance(衝突回避)、driving behavior competence(運転挙動の能力)、assertiveness(積極性)」を挙げ、「過度な積極性と不十分な能力」という異例に率直な表現で批判した。自動運転業界の規制当局がこれほど直接的な表現を使うのは珍しく、業界関係者の間でも波紋を呼んでいる。

【自動運転ラボの視点】
NHTSAの「過度な積極性と不十分な能力」という表現は、Avrideだけを指すものではないと読む向きもある。商業展開を急ぐ自動運転業界全体への警鐘として受け止めるべき言葉だ。技術の成熟より速く市場に出ることのリスクを、規制当局が正面から指摘したという意味で歴史的な表現といえる。

■なぜ監視員は止めなかったのか

今回の事案で最も注目されているのが「なぜ安全監視員は止めなかったのか」という問いだ。16件の全事故において、訓練を受けた安全監視員が運転席に同乗し自動運転システムが作動中だった。それでも介入が確認されたのは1件のみだ。Avride社は「なぜ監視員が介入しなかったか」を公式に説明していない。

「監視員疲労(monitor fatigue)」は自動運転業界でよく知られた課題だ。単調な監視作業が続くと人間の集中力は低下し、異常を察知しても反応が遅れる。テスラのFSD監視員でも同様の問題が報告されており、「人間の監視があれば安全」という前提が揺らいでいる。Avride社は「各インシデントについて技術的・運用的な修正を実施し、事故頻度は走行距離が増えるにつれて低下している」と述べているが、監視員の問題への言及はない。

【参考】関連記事としては「テスラ、自動運転ロボタクシー事故を隠蔽か」も参照。

テスラ、自動運転ロボタクシー事故を隠蔽か

■Avride社はYandex自動運転部門が起源の企業

Avride社はオースティンに主要拠点を持ち、本社はマサチューセッツ州ニューベリーポートのスタートアップだ。従業員約270人で、テルアビブ・ベオグラード・ソウルにもオフィスを構える。

2017年から技術開発を進めたYandex(ロシアの大手IT企業)の自動運転部門が2020年12月にスピンオフしてAvride Inc.となった。その後2022年のロシアのウクライナ侵攻を受け、Yandex NVは2024年にロシア国内事業を約52億ドルで売却しNebius Group(オランダ登記)に改名。AvrideはそのNebius Groupの子会社として存続している。「独立したスタートアップ」ではなく、現在もNebius傘下にある。

2024年にUberとロボタクシーパートナーシップを締結し、UberとNebiusから最大3億7,500万ドルの戦略的投資および商業コミットメントを受けた。現在 200台のフリートを運用し、最大500台への拡大を計画している。

日本では楽天と提携して東京で配送ロボを展開

日本との接点も持つ企業だ。Avrideの歩道走行型配送ロボットは、2025年に楽天との提携を通じて東京中心部での商業展開を開始した。当初10台規模でスタートし、長期的な拡大を予定している。米国ではUber Eatsの配送もAvrideが手がけているが、日本での展開は楽天との提携によるものだ。また自動運転ラボでも報じた通り、Uber・Waymo日産の三社は東京でのロボタクシーパイロット展開を2026年末に向けて準備しており、Uberの日本での存在感は今後さらに高まっていく。

【参考】関連記事としては「米Uber、自動運転タクシーの「1兆ドル市場」独占か」も参照。

■「Uberにとっても他人事ではない」。調査が持つ業界的意味

Uberは2015年から2020年にかけて数十億ドルを投じて自社の自動運転プログラムを開発した。しかし2018年3月、アリゾナ州テンピで自社の自動運転車が歩行者を死亡させる事故を起こし、自動運転部門を閉鎖してAuroraに技術を売却した。その後Uberは「自社で開発するのではなくプラットフォームとして複数の自動運転企業と提携する」モデルへ転換した。今回調査対象となったAvride、そして世界シェア1位のWaymo、ZooxやAuroraとの提携がその産物だ。

The Next Webが指摘した通り、今回の調査は「プラットフォームとして自動運転車を提供しているが、その車を自ら作ったわけでも直接制御しているわけでもないUberの責任をどう評価するか」という問いを初めて本格的に試す場になりうる。Uberはロボタクシーを「1兆ドルの機会」と呼び、2026年Q1には自律走行トリップが前年比10倍に成長したと発表した。事故調査と急拡大が同時進行している状況だ。

【参考】関連記事としては「米Uber150億円超を投下、「自動運転の巨大連合」の確立へ」も参照。

■「監視員がいれば安全」は幻想だったのか

今回の事案が示すのは「安全監視員がいるから大丈夫」という自動運転普及の前提への疑問だ。16件中15件で監視員が止めなかったという事実は、「人間の監視」への過信という問題を浮き彫りにする。NHTSAの「過度な積極性と不十分な能力」という表現は、Avrideだけでなく「技術より速く商業展開を急ぐ業界全体」への警鐘と読める。

こうした調査と事案の積み重ねが、技術の改善と安全基準の強化につながっていく。自動運転ロボタクシーが本当に「使える安全な乗り物」になるために必要なプロセスとして、Avrideの調査結果と今後の対応を期待を持って注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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