テスラのモニターに「幽霊」映る。誰もいない墓地で・・・

高性能ゆえ?ただの誤認識?

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出典:X

カメラとAIによるパーセプション技術に磨きがかかり、自動運転間近とささやかれるテスラ。その高性能な認識技術は特筆ものだが、ついには「見えないもの」も認識してしまったようだ。

あるオーナーが墓地を通りがかったところ、辺りに人気(ひとけ)がないにもかかわらず、車内モニターに人影が映ったのだ。もしかしたら、テスラビジョンは「ゴースト認識機能」を備えているのかもしれない。

笑い話になりそうだが、これが誤認識であるならば、自動運転を目指すシステムとしては大問題に発展しかねない。この現象は、果たして高性能ゆえか、ただの誤認識なのか。テスラの最新事情に迫る。

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■テスラのゴースト認識機能の概要

誰もいない墓地で人間を認識……

まず、2025年1月にXに投稿された動画を見てほしい。45秒の短い動画で、夜間の墓地敷地内らしきところをゆっくり走行している。映像には、テスラの車内モニターが映し出されている。

車内で男女が何かしら会話をしているところ、突然モニターの左側に人影が映し出された。おそらく一瞬映ってすぐ消えたものと思われるが、車内の二人は悲鳴を上げ、パニック状態でクルマを加速する様子が収められている。

車内モニターには、テスラのADAS用車載カメラが認識した車両周辺のオブジェクト、例えば歩行者や信号機、車両などがリアルタイムで映し出される。例えば、カメラが前方に人間のような物体を検知し、AIがそれを人間と判断すれば、モニターに人型のマークが映し出されるのだ。

夜間に墓地を走行中、人気(ひとけ)のないところでマイカーが人間らしきものを検知し、それをモニターに表示したら、大概の人はパニックに陥るだろう。ホラー映画そのものだ。

今回の動画に関しては、墓地というシチュエーションに対し意図的に車内モニターを映していたため、怪しい人影が映るのをあらかじめ期待していたか、あるいは作為的なもの、フェイク動画の可能性もゼロではない。

そこで、Youtubeなどで類似動画を探してみた。

ゴーストハントが一部オーナー間で流行?

Youtubeで「Tesla Ghost」などで検索すると、思いのほかいろいろな動画がヒットした。4年前の時点で「ゴースト」は確認されているようで、一部のテスラオーナーの中で、昼夜問わず墓地をマイカーで散策し、ゴーストを探す遊びが流行っているようだ。

中には、自宅のガレージでゴーストに遭遇した動画もあった。誰もいないにもかかわらずテスラビジョンが人間を認識し、それがモニター上で動いていたり、一瞬映ってすぐ消えたりする……というのは、シチュエーション次第で震えあがる怖さとなる。意図せずそんなシーンに出くわしたら、冗談抜きでパニックに陥っても不思議ではないだろう。

ともかく、こうしたゴーストの大半はフェイクの類ではなさそうだ。

■テスラビジョンによるゴースト認識の要因

センサーやAIの誤認識か、それ以外か

フェイク動画ではないとすれば、ゴーストの正体は何なのか。可能性としては①テスラビジョンが本物のゴーストを可視化した②何かしらのオブジェクトを人間と誤認識した③オブジェクトの誤認識以外の要素でAIが人間の存在を判断した――ことなどが考えられる。

①であれば、それはそれで大発明となりそうだが、非科学的過ぎるためここでは却下する。②は本命となる要因だ。墓石や花束などの供え物を人間と誤認識してしまったケースだ。

ただ、動画の中には、テスラビジョンが人間を認識した辺りに何もないケースや、人間が動き回っているケースなども散見される。センサー付近に付着したゴミの影響や虫などの存在も考えられそうだが、一概に②のみが原因とも言えなさそうだ。

③は、明確にオブジェクトを誤認識したわけではなく、センサーやAIにおける何らかの要因で人間がそこにいると判断してしまったケースだ。ソフトウェア上の問題ゆえ、場合によっては致命的な欠陥となり得る。

いずれにしろ、①以外の要因であれば、テスラビジョンにおけるパーセプション技術に欠陥があることになる。もしかしたら、気づかないだけで市街地などの走行時においても存在しない人間を検知している可能性も考えられるだろう。

神輿上の人間や看板の誤認識も

テスラビジョンの誤認識は、今に始まったわけではない。ADASゆえ、まだまだ未熟なところがあるのは事実だ。

日本では、2024年8月に前を横切る神輿の行列をテスラビジョンが解析した動画がXに投稿された。このケースでは、神輿の上に乗った人間をテスラビジョンは認識しなかったようだ。

また、2024年11月には、ファミレスチェーン「ガスト」の看板を「STOP(一時停止)」標識に誤認識した例も投稿されている。

米国でも「BURGER KING」の看板を誤認識する事例などが報告されているほか、踏切内を通過する列車をトレーラーなどが連なって走行しているよう誤認識した例もあるようだ。踏切は交差点として認識されたようだ。

このほか、過去には得体のしれない何かを検知して急ブレーキを作動する「ファントムブレーキ」が大きな話題となったこともあった。ある意味、このファントムブレーキと今回のゴースト騒ぎは類似しているのかもしれない。

【参考】テスラの誤認識については「テスラの視覚システム、列車を「トラックや乗用車の車列」と誤認識」も参照。

テスラの視覚システム、列車を「トラックや乗用車の車列」と誤認識

ADASだからゴースト認識機能は許されている?

こうした誤認識の多くは笑い話・ネタとして話題となっているが、それはあくまでもADASにおける誤認識だからだ。テスラの誤認識案件は「Autopilot」が基本で、高機能バージョンの「FSD」でも同様の事案が発生しているかは不明だが、いずれにしろ現状はADASに過ぎない。

ADASである限りドライバーは常時周囲を監視し、必要に応じて車両を制御する義務を負うため、ADASにおけるテスラビジョンが誤認識したとしても、多くはドライバーにより危険を回避することができる。

ただし、ファントムブレーキのような急制動は例外だ。自身や周囲の車両のドライバー含め、誰もが想定しないところでいきなりブレーキをかけることで、後続車両が追突する事故が発生している。

ADASであれ、強力な車両制御能力を有するものは危険を伴う。一般的なADASは、車両の縦方向の制御をアシストするアダプティブクルーズコントロールと横方向の制御をアシストするレーンキープアシストに代表されるが、これらの機能は過酷な条件下では発動されず、無理のない範囲であくまでドライバーの運転をアシストするよう設計されている。万が一制御がおかしいと感じた際、ドライバーがすぐに対応可能なレベルで機能しているのだ。

急制動を伴うADASにおける誤認識は危険

しかし、ファントムブレーキのように予期せぬところで強いブレーキ制御を行うシステムは危険をはらんでいる。日本では「衝突被害軽減ブレーキ」の搭載が標準化されているが、もしこの機能が予期せぬタイミングで強く発動されたら、怖くないだろうか。何もないところでシステムが強めに急ブレーキをかけたら、ドライバーは一瞬パニックに陥る。後続車も油断していれば追突してしまうかもしれない。

センサー×コンピュータによる車両制御の度合いが高くなればなるほど、一種の危険性も強くなるのだ。これはファントムブレーキに限らず、何かしらの誤検知による急操舵などの回避行動も該当する。

仮に、冒頭のゴースト(人間)を車両が進路上に検知し、人間だと思い込んで急ブレーキや急操舵を行った場合、ドライバーは何が起こったのか把握できずに対応が遅れ、事故の危険性が増すのは言うまでもないことだろう。

自動運転における誤認識は即リコールも

コンピュータによる車両制御の完成形の一つが自動運転だ。自動運転は、センサーとAIが脳と目の役割を代替し、周囲の状況を把握して車両を制御する。ADASのようなアシストではなく、コンピュータが責任をもって車両制御のすべてを全うするのが自動運転だ。

この自動運転において、センサーがゴーストを検知した場合どうなるか。当然、ADASの時と同様急ブレーキや急操舵による回避行動をとることとなるが、問題は対応可能なドライバーがいないことだ。

単純に誰もいないはずの進路上の空間に人間を誤認識した場合、距離があればゆっくりブレーキをかけ、必要に応じて操舵を行って回避する。周りから見れば「?」な行動だが、急制動しなければ大きな危険はない。

しかし、間近な進路上の空間に突発的に人間を誤認識した場合、自動運転車は急ブレーキや急操舵を行う可能性が高い。場合によっては、避けるために対向車線にはみ出てしまうことも考えられる。

周囲を走行する車両や歩行者は、自動運転車の急制動を予測することはできず、またその理由を理解できず、巻き込まれる可能性がある。ドライバーによるフォローも期待できない。こうした事案が発生すれば、遅からずリコール案件となるだろう。

つまり、自動運転車においてはこうした誤検知は許されないものとなるのだ。ADASにおいては、単純な誤検知は許容範囲であっても、ファントムブレーキのような急制動を伴うものはリコールレベルの扱いを受ける。そして、自動運転においては、単純な誤検知がいつどのような危険に結びつくかわからないため、判明次第改善が求められることになる。

もし、テスラがゴースト認識機能を改善しないまま自動運転化に踏み切った場合、どうなるか。おそらく、ゴーストは墓地以外にも出現するため、どこかでゴーストに対しブレーキ操作やハンドル操作が行われることになる。何度も書いているが、進路上に突然現れれば急制動となり非常に危険な状態となる。つまり、テスラは直ちに同機能を修正しなければならないことになる。

ここで疑問となるのが、これまで数年間にわたってこのゴースト認識機能を放置している点だ。Autopilot限定で放置しているのであれば当面問題ないかもしれないが、FSDでも同現象が起こり、それを改善していないのであれば問題視すべき点となる。

このゴーストに起因する事故はまだ起こっておらず、事故が発生してから対処するパターンが考えられる。しかし、こうした誤認識は指摘するまでもなく未然に改善すべき事案だ。自動運転化を推し進めるテスラには、誠実な対応を求めたい。

■テスラビジョンの概要

カメラのみのセンサー構成に固執

多くの方がご存じのように、テスラはLiDARを用いず、カメラビジョンに依存した自動運転システムを構築している。

かつてはミリ波レーダーや超音波センサーを併用していたが、2021年ごろから順次カメラのみのセンサー構成に移行している。当初はレーダーなどを取り除いた影響で認識機能や一部機能に劣化が見られたが、段階的な改善を続け、Autopilotの空間ポジショニングがより高解像度となり、さらに遠くを見通せる視認性や物体識別、判別能力の向上を実現したという。

正直なところ、カメラのみで市街地におけるレベル2+を実現しているのは称賛に値する。ただ、逆光などどうしてもカメラが苦手とするシチュエーションは少なくない。

サーマルカメラなど特殊なセンサーを併用すれば、今回のゴースト問題も簡単に解決できそうだが、テスラはあくまで独自路線を歩むようだ。

ただ、テキサス州オースティンでサービスインしたロボタクシーは、ジオフェンスで走行可能なエリアを区切っている。Waymoなどと同様ODD(運行設計領域)を設定するなど、妥協が見られるのも事実だ。

イーロン・マスク氏が「カメラのみ」にどこまでのこだわりを持っているかは不明だが、センサースイートにおいても一定の妥協を図ることが許されれば、テスラの自動運転機能はいっそう飛躍的に向上する可能性がある。

自動運転業界の覇者に向け、テスラが新たな動きを見せるか注目だ。

■【まとめ】自動運転に向け改善必須

自動運転を基準にすると、まだまだ課題が多く残されていると思われるテスラのシステム。FSDにおいてどこまで改善が図られているのかは不明だが、ゴースト認識機能のようなエラーはまだいろいろと残されているはずだ。

テスラはこうした課題の一つひとつをどのタイミングで改善し、自動運転に向かうのか。引き続き同社の動向に注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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