カナダの自動運転スタートアップであるWaabi(ワービ)は、シリーズBラウンドにおいて2億ドル(約315億円)を調達したことを2024年6月20日までに発表した。2025年の完全自動運転のトラック発売に向けての資金調達になる。出資企業には米UberやNVIDIAなど、そうそうたるメンバーが名を連ねる。
同社は米Uberで自動運転車開発プロジェクトの責任者であったRaquel Urtasun氏が、2021年にカナダのトロントで設立した企業だ。設立わずか4年ほどで完全自動運転トラックの商用化をもくろむWaabi。資金調達の詳細とともに同社のこれまでの自動運転開発について振り返ってみよう。
■UberなどがシリーズBを主導
WaabiのシリーズBラウンドは米Uberと米ベンチャーキャピタルのKhosla Venturesが主導したもので、NVIDIAのほかボルボ・グループ・ベンチャー・キャピタルやポルシェ・オートモービル・ホールディングなども参加している。そのほか有力投資会社も多数参加しており、Waabiへの期待の高さをうかがわせる。
今回の資金調達により、累計資金調達額は2億8,000万ドル(約442億円)となった。この資金は、2025年に完全ドライバーレスの自動運転トラックの提供をスタートさせるために投じられる計画だ。自動運転レベルは「4」になる。
また、この資金は同社の商業事業の成長や、カナダと米国の両方でチームを拡大させることにも活用されるという。
具体的には、テキサス州での新しい自動運転輸送ターミナルの開設や、NVIDIAとの提携により自動運転車向けの次世代の集中型コンピューター「NVIDIA DRIVE Thor」を次世代型自動運転トラック輸送技術「Waabi Driver」に統合すること、テキサス州で米フォーチュン誌の「フォーチュン500」企業や上位層の荷主のために自律型輸送を行う配送マッチングプラットフォーム「Uber Freight」との継続的な提携などにも活用されるようだ。
■AIファーストで自動運転開発
Waabiは自動運転技術開発において、「AI(人工知能)ファースト」を採用している点が他社と異なる。
多くの自動運転開発企業は、実世界で車両を走らせることで、道路や建物などの情報について時間をかけて学習させ、ソフトウェアをアップデートしていく。それに対しWaabiは、「Waabi World」を用いて仮想テストを行い、システムにほぼ無限の種類の道路状況を経験させている。これにより実世界でのテスト走行の必要性が大幅に軽減され、より安全で安価なソリューションの実現を可能にするというわけだ。
なおWaabi Worldとは同社が2022年2月に発表した自動運転シミュレーターのことでAIが搭載されており、シナリオ作成やスキルの評価、自動運転技術の教育を行うことができる。
2024年4月には、テキサス州北部にあるダラス郊外のランカスターにある自動運転トラックターミナルを複数年リース契約し、Waabiのテキサス事業の拠点とすることを発表した。これが前述した「テキサス州での新しい自動運転輸送ターミナル」だ。
この施設は、同社の開発業務と米国南部での継続的な商業的成長をサポートするものになるという。
■時価総額世界一のNVIDIAが期待
今回の資金調達ラウンドにおいてWaabi CEOのRaquel Urtasun氏は以下のようにコメントし、今後の計画に自信を示している。
この3年間、Waabiの素晴らしいチームとともに、私はこれらのブレークスルーを、期待をはるかに上回る画期的な製品に変える機会に恵まれた。画期的な技術や素晴らしいチーム、先駆的なパートナーや投資家など、2025年に完全なドライバーレスの自動運転トラックを発売するために必要なものは全てそろっている。これは業界にとって記念すべきことであり、まさにAIの次のフロンティアの始まりを示すものだ。
またUberのCEOであるDara Khosrowshahi氏は、以下のようにコメントした。
我々は自動運転技術が輸送に革命をもたらし、より安全で持続可能な未来を実現する可能性を信じている。Raquelはこの分野の先見者であり、彼女のリーダーシップの下、WaabiのAIファーストのアプローチは、拡張性と資本効率の両面で非常にエキサイティングなソリューションを提供するだろう。
そしてNVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は、以下のようにWaabiのCEOであるUrtasun氏の開発力・技術力を高く評価している。
Waabiは、最先端のジェネレーティブAIを物理的な世界に適用することで、自律型トラック輸送を開発している。私は10年以上にわたり、RaquelのAIにおける先駆的な仕事を支持してきた。不可能を解決しようとする彼女の粘り強さは、インスピレーションの源だ。
■注目の2社からの出資獲得が追い風に
NVIDIAは、このほど時価総額が世界首位になった世界中から注目を集める半導体メーカーだ。またUberは米ライドシェア最大手のテクノロジー企業だ。大手企業から出資を獲得したWaabiの今後がますます期待される。
【参考】関連記事としては「Volvo Group、Uber出身者創業の自動運転企業Waabiに出資」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)