日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)、いわゆる「赤組」と「青組」の戦いは、当然のことながら航空旅客運送がメインフィールドだ。国内線・国際線における路線拡大やシェア獲得に向け、長年にわたって良きライバルとして切磋琢磨してきた。
そんな赤組と青組が「空飛ぶクルマ」分野でも火花を散らしている。両社ともに他社との提携などを通じて、この新たなエアモビリティの分野で業界をリードしようと、さまざまな取り組みを行っている。
例えばJALはこのほど、空飛ぶクルマと称されるeVTOL(電動垂直離着陸機)の運航に向けた企業として、住友商事と共同出資でSoracle社を設立した。
■出資比率50%ずつで運航企業を設立
JALと住友商事は2020年に、エアモビリティ分野における業務提携を提携した経緯がある。
プレスリリースで両社は、JALの航空運送事業における安全運航のノウハウと、住友商事の航空業界におけるネットワークや多角的な事業活動を通じて培ったノウハウを生かし、エアモビリティ事業の取り組みを加速するとしている。
ちなみにSoracle社の設立は2024年6月3日付。資本金は2億円で、出資比率はそれぞれ50%となっている。代表取締役にはJAL側からは佐々木敏宏氏が、住友商事側からは太田幸宏氏が就任した。
JALは2023年2月、大阪・関西万博における未来社会ショーケース事業の空飛ぶクルマの運航事業者に選定されたことで注目を集めた。
■イオンにANAのエアタクシーの駅が?
ANAも空飛ぶクルマに関する動きで、決してJALに負けていない。2024年に入ってからは3月、空飛ぶクルマの離着陸ポートの設置に向け、ANAホールディングスとイオンモールで覚書を締結した。主に関東圏と関西圏のイオンモールに空飛ぶクルマの離着陸ポート、いわゆる「バーティポート」の設置を目指す。
【参考】関連記事としては「バーティポートとは?「空飛ぶクルマ」の離着陸場」も参照。
覚書は、両社でバーティポートの開発や運用、事業性、法律・制度や社会受容性といった環境整備などの検討を行う内容となっている。
将来的には、ANAが実現を目指している空飛ぶタクシーのサービスで利用することを想定しており、プレスリリースでは「空を飛び、瞬く間に目的地に到着するシームレスで新たな価値の創造を目指します」としている。
ANAは、空飛ぶクルマを開発するアメリカのベンチャー企業Joby Aviationと取り組みを進め、JALと同様、大阪・関西万博における運航事業者に採択されている。
■「大ごけ」する可能性もある中で・・・
空飛ぶクルマに関しては、同じくモビリティ分野の先端テクノロジーである自動運転技術とは異なり、まだ商用展開が行われていない。機体の開発やインフラの整備、そして各国政府が社会実装に向けた法整備などを進めているが、「大ごけ」する可能性も少なからずあるビジネス領域だ。
そんな中でも、JAL、ANAともに取り組みを少しずつ前に進めている。空飛ぶクルマ関連のプロジェクトを進めるための人材確保や体制整備、投じた研究開発費を無駄にせず、しっかりと将来、ビジネスの柱の一つにしていけるか、今後も注目が集まりそうだ。
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは?(2024年最新版) 開発企業・実用化状況まとめ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)