事故で停止の自動運転実証、BOLDLYが再開発表 システムは想定通りに機能

事故原因と再発防止策を警察に報告

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出典:ソフトバンク・プレスリリース

ソフトバンク子会社で自動運転事業を展開するBOLDLY(ボードリー)は2023年12月8日、接触事故の発生により運行を停止していた自動運転車両「MiCa(ミカ)」について、同日から運行を再開することを発表した。

事故原因の調査を行い、MiCaの自動運転システムは想定通りに機能していたが、特定の場所におけるバス停発車直後のルートに課題があったことが判明したという。

■レベル2で運行中にタクシーと接触事故

事故は11月25日午後、「FUKUOKA Smart EAST モビリティ推進コンソーシアム」から受託した実証実験を実施中に発生した。JR箱崎駅東口のロータリー内において、後方から来たタクシー車両と接触した。被害はMiCaとタクシーともに物損のみで、負傷者は出ていない。

詳しい発生状況について、BOLDLYは11月25日付のプレスリリースで以下のように説明している。

自動運転車両は、JR 箱崎駅東口のバス停に停車後、自動運転モードで発車しましたが、前方に停車していた一般車両を検知し、自動で停止しました。その後、前方の一般車両が動き出したため自動で発進し、右斜め前方に動き出した際、車両の前方右側面が後方から来たタクシーと接触しました。(引用元:https://www.softbank.jp/drive/set/data/press/2023/shared/20231125_01.pdf

ちなみに当時の自動運転のレベルは「レベル2」(部分運転自動化)だった。BOLDLYはレベル2について「運転主体は人、システムは運転支援」と説明している。

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?(2023年最新版)」も参照。

■警察に原因と再発防止策を報告

事故発生後に事故原因などの検証作業を行い、警察に原因と再発防止策を報告後、運行再開の許可を得たという。実証実験は12月3日まで実施される予定だったが、12月14日まで延長して実施する予定だとしている。

事故に関してはプレスリリースで「特定の場所におけるバス停発車直後のルートに課題があったことが分かりました」と説明。その上で「『MiCa』の自動運転システムは想定通りに機能していたことが確認されました」ともしている。

ちなみにここで1点触れておきたいが、人間が実質的に判断、操作介入している自動運転レベル2以下での事故と、レベル3以上の本当の意味での自動運転時の事故とは分けて取り上げるべきだ。これらを一括りに「自動運転の事故」と表現すると、誤った認識が広がるとともに社会受容性にも悪影響が出るため、自動運転業界の関係者は特に気をつけて情報発信するべきだ。

■無人移動サービスの実用化で国内屈指の企業

BOLDLYは自動運転移動サービスの運行支援・実用化で国内屈指の企業だ。自動運転車自体の製造・開発は手掛けていないが、他社が開発した自動運転バスの実用化の支援において、国内で最も実績が多い企業の一社と言える。

今回の実証実験で使われていたMiCaは、エストニア企業であるAuveTech社製の自動運転シャトルだ。BOLDLYとAuve Techは戦略的協業に合意し、MiCaの日本仕様車の開発を進めてきた経緯がある。BOLDLYはフランス企業Navyaの自動運転シャトル「ARMA」でも実用化実績が多い。

今後についてBOLDLYは「安全対策をより一層強化し、引き続き自動運転サービスの普及を通して運転手不足の課題解決に貢献し、持続可能な公共交通の実現を目指していきます」としている。

事故は起きないに越したことはないが、事故が発生した以上、重要なのはその後の対応だ。早期に原因究明と再発防止策に取り組んだBOLDLY。今後の同社の取り組みに引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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