民間調査会社のMM総研はこのほど、ライドシェアに関する社会受容性を調査した結果を公表した。調査結果を読み解くと「日本人の大半は、乗ったことがないからライドシェアに反対している」という仮説が成り立つ。日本人はライドシェアに関しては「乗らず嫌い」なのか。
■利用経験があると8割以上が賛成
アンケートは2023年10月にウェブ上で実施。無償のボランティアやガソリン代など実費のみを払う「非営利型」ではなく、ドライバーに対価を支払う「営利型」について調べた。
日本におけるライドシェア導入については、6割超が日本での導入に「反対」「どちらかといえば反対」、約4割が「賛成」「どちらかといえば賛成」という結果だった。賛否の割合に極端な差はなく、これまで行われてきた調査結果と比べて特筆すべきことではない。注目すべきは、利用経験の有無によって回答に大きな差が出たことだ。
アンケート対象者は全国の15~79歳の男女3,000人で、そのうち2,780人がライドシェアの利用経験がないと答えている。これは回答者の9割以上となる数字だ。利用経験がない人の賛否は、賛成が35.6%、反対が64.4%だが、海外でライドシェアを利用したことがある220人に絞って回答を見てみると、賛成84.1%、反対15.9%と、賛否が逆転していることが分かる。
また、利用したことがある人のうち、利用したサービスに「不満がある」と回答した人は約8%にとどまっている。つまり日本には「乗ったことないからライドシェアに反対している」人が多くいるのではないだろうか。
日本では営利型のライドシェアサービスが解禁されていないため、利用経験のある人が少ないのは当然だ。2023年9月に民間シンクタンクである紀尾井町戦略研究所が行った調査でも、対象者のうち海外でライドシェアを利用したことのある人は5.4%にすぎない。
また、同様の調査では「分からない」「どちらともいえない」という回答も多い。未知への恐怖心から賛成とは言えないが反対すべき明確な理由も見当たらない、といったところだろうか。
■利用経験のない人、メリットの認識が不十分
メリットとデメリットについての回答を見ても、経験の有無によってとらえ方が違う。
メリットに関しては、利用したことがない人は「タクシーと比べて料金が抑えられる」(37.5%)が最も多く、「地方などの交通課題解決の一助になる」(37.4%)が僅差で続いた。一方、利用したことがある人は「乗降車がスムーズ」(38.2%)が最も多く、「乗車前に目的地までの料金がわかる」(36.8%)が続いた。
また、利用経験のある人は「キャッシュレス決済が中心となりトラブルが発生しにくい」も選んでいて、その割合は利用経験がない人より約20ポイント高かった。利用経験のない人は、多彩なメリットを十分に認識できていないのかもしれない。
デメリットについては、利用したことがない人は「犯罪などに巻き込まれる可能性がある」(46.4%)が最も多く、利用したことがある人は「運転の質や安全性が担保されない」(36.8%)が最も多かった。
安全性については、利用経験の有無にかかわらずデメリットとして挙げる人が比較的多かったが、「犯罪などに巻き込まれる可能性がある」「接客の質が不安」を選択した人は、経験がない人より利用したことがある人の方が15ポイント以上低かった。
利用経験がない人は、デメリットを過剰に見積もる傾向があるようだ。もちろん、安全性を担保する制度の整備は不可欠だ。幸い、すでにライドシェア先進国がいくつもあり、車両点検の義務化や犯罪歴の確認など、さまざまな取り組みを参考にできる。
■食わず嫌いで日本の未来を閉ざさないように
「なんか怖いから」「乗ったことないから」という理由で、ライドシェアに反対している人は多いだろう。でも、恐れているばかりでは先に進めない。イノベーションが生まれない国どころか、新しいサービスを利用することさえできない国になってしまう。
「食わず嫌い」(乗らず嫌い)でイノベーションが阻まれることだけは、なんとしても避けたいところだ。
【参考】関連記事としては「ライドシェア、解禁派は主に「意識高い系」?全体では賛成45%にとどまる」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)