日本最強ユニコーンPreferred Networks、損失30億円超 第9期決算

ディープラーニングを武器にする東大発ベンチャー

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出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

日本を代表するユニコーン企業で、自動運転関連技術の開発も手掛けるAI(人工知能)開発企業の株式会社Preferred Networks(本社:東京都千代田区/代表取締役CEO:西川徹)。同社の第9期決算公告(2022年2月〜2023年1月)が、このほど官報に掲載された。

第9期は売上高が76億5,500万円、当期純損失は30億6,600万円であった。

これと同じタイミングで、同社は新設分割により、生成AI事業に関する新子会社「Preferred Elements」を2023年11月1日に設立することを発表した。2021年11月には、自律移動ロボット事業を手掛ける「Preferred Robotics」も新設分割により設立している。

過去の新設分割の経緯があるため、同社の決算を過去の決算と単純に比較はしにくいが、参考のために記載すると、第7期(2020年2月〜2021年1月)は、売上高84億8,600万円、当期純損失12億1,800万円であった。なお第8期分は官報に掲載されていないようだ。

■決算概要(2023年1月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:百万円)

▼資産の部
流動資産 18,695
固定資産 1,466
資産合計 20,161
▼負債及び純資産の部
流動負債 3,690
(うち引当金)(290)
固定負債 3,386
負債合計 7,077
株主資本 12,592
資本金 8,031
資本剰余金 8,008
資本準備金 8,008
利益剰余金 △3,447
その他利益剰余金 △3,447
新株予約権 492
純資産合計 13,084
負債・純資産合計 20,161

損益計算書の要旨(単位:百万円)

売上高 7,655
売上原価 2,440
売上総利益 5,215
販売費及び一般管理費 6,477
営業損失 1,261
営業外損益 67
経常損失 1,194
特別損益 △1,867
税引前当期純損失 3,061
法人税、住民税及び事業税 5
当期純損失 3,066

■東大発ベンチャーPreferred Networks

Preferred Networksは、CEO(最高経営責任者)の西川氏と最高研究責任者の岡野原大輔氏が東京大学大学院在学中に、仲間とソフトウェア開発を行うPreferred Infrastructureを創業したことが始まりだ。その後ディープラーニング(深層学習)への取り組みを加速するため、2014年にPreferred Networksを設立した。

Preferred Networksは「現実世界を計算可能にする」をミッションに、ディープラーニングやロボティクスなどの最先端技術を最短路で実用化することで、これまで解決が困難であった課題を解決することを目指している。

主な事業領域は、交通システム、製造業、ライフサイエンス、ロボティクスとなっている。また、新規事業領域として、姿勢推定やエンターテインメント、教育、材料探索にも取り組んでいるという。さらに、ディープラーニングのソフトウェア技術やプロセッサー、スーパーコンピューターの開発も手掛けている。

出典:Preferred Networks公式サイト
■物体認識技術や車両情報解析など

事業領域の1つである交通システムにおいては、自動運転やコネクテッドカーに欠かせない物体認識技術や車両情報解析などの研究開発を行っている。

またロボティクス分野では、同社からスピンオフしたPreferred Roboticsが自律移動ロボットの経路計画と経路追従の技術開発などを行っている。開発した製品として、業務用清掃ロボットや家庭用自律移動ロボットがある。

2023年11月から始動するPreferred Elementsは、マルチモーダルな基盤モデルの開発強化を目的に設立された。2024年の基盤モデル開発と商用サービス提供開始を目指しているようだ。

トヨタも注目する日本最強のユニコーン

Preferred Networksは、トヨタから2015年10月に10億円、2017年8月に105億円の資金調達を行っている。2017年12月にはファナック、博報堂DYHD、日立製作所、みずほ銀行、三井物産から合計で20億円超の資金調達を実施した。また2018年7月には中外製薬と東京エレクトロンから合計約9億円、2019年6月にはJXTGホールディングスから約10億円の資金調達を実施している。

同社の時価総額は3,500億円を超えており、現在12社ある日本のユニコーンの中でトップとなっている。なおユニコーンとは、企業価値が10億ドル(約1,500億円)以上の非上場企業のことを指す。

2023年8月にはENEOSと共同で、同年1月に石油精製・石油化学プラントを自動運転するAIシステムの常時使用をENEOS川崎製油所石油化学プラント内のブタジエン抽出装置で開始し、手動操作を超える経済的で高効率な運転を達成したことを発表した。

天才集団とも言われるPreferred Networks。さまざまな最先端技術を武器にさらに躍進するか、注目だ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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