空飛ぶクルマを開発する米Joby Aviationが、生産設備設計製作を日本企業に発注していたことが判明した。
Joby Aviationに採用されたのは、株式会社タマディック(本社:東京都新宿区/代表取締役社長:森實敏彦)で、eVTOL(電動垂直離着陸機)の開発において、試作機生産及び量産検証に用いられる治具(※製造作業を補助する器具の総称)の設計・製作を担っているという。タマディックが2023年9月19日に発表した。
空飛ぶクルマ開発の世界的トップランナーの1社であるJoby Aviationに認められる技術を有するタマディックとは、どんな企業なのだろうか。
■1959年設立のタマディック
1959年設立のタマディックは、「航空宇宙、自動車分野における開発・設計・生産技術・試験解析」のほか「精密機器、FA・ロボティクス、搬送装置などの開発・設計」、「各種専用機および電気制御機器などの設計・製造・販売」などを手掛けている企業だ。
戦後初の国産小型旅客機「YS-11」から航空産業に参入し、設計開発・生産技術・解析業務を手掛けてきている。同社は米国現地法人を設置しており、今回のJoby Aviationとのプロジェクトでも米国法人が営業窓口となり、仕様打合せや交渉、見積書・スケジュール提出などを行ってきた。なお、製作は日本で行ったという。
Joby Aviationからは、「最終組立て用治具」の設計製作、そして「穴あけ加工用治具」、「トリム加工用治具」、「検査用治具」などの設計業務を受注した。なお治具とは、加工や組み立ての際、部品や工具の作業位置を指示・誘導するために用いる器具の総称だ。
これらの治具は2021年6月に受注し、2022年9月に納品された。現在もJoby Aviationの機体の生産ラインで活用されており、2023年6月に米連邦航空局(FAA)により特別耐空証明を取得した機体や量産試作機の製作に用いられているという。
■航空・宇宙事業部が設計を担当
タマディックの最終組立て用治具は、主翼を胴体へねじ止めする工程において、主翼を結合位置へ降下させる作業で使用されている。
eVTOLは、機体だけでなく機体製作で使用する治具においても、航空宇宙産業品質マネジメントシステム(JIS Q 9100)に沿ったプロセスで開発を行っていくことが求められるのだという。
また、eVTOLには軽量・高比強度・高比剛性などの特性を有するCFRP(炭素繊維強化プラスチック)が構造材料に用いられているため、JIS Q 9100の認証を取得しており、CFRP部品の生産技術を有するタマディックの航空・宇宙事業部が治具の設計を担当した。
■日本企業が陰の立役者に
Joby Aviationは過去に、eVTOLの構成部品を供給するサプライヤーとして、航空機部品などを手掛ける日機装を選出している。2021年7月に日機装が発表したもので、両社は複合材部品の設計の初期段階から協力し、量産段階での製造のしやすさを考慮した最適な設計、競争力のあるコストを実現することを目指すとしていた。
今回タマディックの採用も明らかになったことで、日本企業の技術力が空飛ぶクルマ開発においても世界に誇れることが証明された。空飛ぶクルマ開発大手のJoby Aviationに認められた企業として、今後も世界のエアモビリティ企業から引く手あまたになっていくかもしれない。
【参考】関連記事としては「日機装、Joby Aviationのサプライヤーに!空飛ぶクルマへ部品供給」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)