自動運転技術を活用した次世代物流システムの構築を進める株式会社T2(本社:千葉県市川市/代表取締役CEO:下村正樹)は2023年9月5日までに、シリーズAラウンドで総額35億円の資金調達を実施したことを発表した。
引受先は、宇佐美鉱油、東邦アセチレン、三井住友海上火災保険、三井倉庫ロジスティクス、JA三井リース、KDDI、紀陽キャピタルマネジメント、大和物流、三井住友信託銀行の9社となっている。
なお同社は同年6月にプレシリーズAラウンドとして12.5億円の資金調達を実施しており、シリーズAラウンドと合わせた合計調達額は47.5億円に上る。この資金調達により、「自動運転レベル4」の技術を活用した幹線輸送サービスの開発を加速させるとともに、物流、金融、通信、化学、小売など多様な業界とも共同で、自動運転技術を活用した物流インフラの構築を行っていくとしている。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?(2023年最新版)」も参照。
■Preferred Networksが技術提供し、三井物産が設立
T2はレベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービスの提供を目指し、AI(人工知能)開発を手がけるPreferred Networksの技術提供を受け、三井物産により2022年8月に設立された。
自動運転技術を活用した社会インフラを構築し、日本の物流を支えることを目指し、自動運転システムの開発やレベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービス事業、幹線輸送に付随した関連サービス事業などを手掛けている。
レベル4の自動運転トラックの社会実装のため、同社が自動運転システムの要素として開発を手掛けているのは、物体認識と自己位置推定、指令判断、車両制御だ。物体認識においては、LiDARとカメラによる高精度の物体認識のほか、センサーフュージョンによるさらに高精度の認識を目指しているという。
また自己位置推定では、GNSS(衛星測位システム)・IMU(慣性計測装置)・点群マッチング・画像とHDマップのマッチングを統合し、自車の位置を正確に推定、周辺状況を把握する技術を確立している。
■自動運転トラック向け物流網を構築へ
T2は2022年11月に、同社初の高速道路における乗用車の公道実証実験を実施した。2023年4月には、高速道路上で大型トラックを用いた自動運転の実証実験に成功したことを発表している。
2023年6月に日本初の自動運転トラックに対応した物流ネットワーク構築に向け、三菱地所と資本業務提携を行うことで合意したことを発表した。なお、プレシリーズAラウンドでは三菱地所が引受先となっている。
三菱地所は、京都府城陽市で次世代のモビリティを受入可能とする高速道路IC直結の「次世代基幹物流施設」の開発計画を進めており、敷地内にレベル4自動運転トラック発着拠点となるモビリティプール(車両を停車する場所)を設置する予定だ。それを今後T2が活用していくという内容になっている。
■T2は「物流2024年問題」の救世主になるか
2024年4月から「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用され、物流業界では「2024年問題」として人手不足などが懸念されている。その解決のカギを握るのが、自動運転技術だとされている。
自動運転トラックの開発を手掛ける米TuSimpleの日本法人TuSimple JAPANは2023年6月に、同年1月から東名高速道路で自動運転トラックの走行実証を開始していることを明かし、日本市場への本格参入を表明するなど、トラックの自動運転開発は国内でも最近盛んな印象だ。
日本発スタートアップであるT2の今後の動向に注目だ。
【参考】関連記事としては「T2と三菱地所、レベル4自動運転トラックの物流網構築へ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)