フードデリバリーや配車アプリなどを手掛けるエストニア企業Bolt(ボルト)がこのほど、自動運転配送ロボットを活用したデリバリーサービスを2023年後半から開始することを宣言した。
Boltは、同じくエストニア発の自動運転配送ロボット開発企業であるStarship Technologiesと提携し、自動運転デリバリーサービスを共同開発していることを2023年6月に発表している。小型6輪ロボットを使い、まずは試験的にエストニアの首都タリンで取り組みを開始するという。
▼Bolt teams up with Starship Technologies for autonomous deliveries
https://bolt.eu/en/blog/bolt-starship-technologies-partnership/
■BoltとStarship Technologiesの提携内容
2013年設立のBoltは、配車アプリから開始し、フードデリバリーのほかライドシェアなどのプラットフォーム開発へと事業を拡大してきた。「米Uberのライバル」や「欧州版Uber」とも呼ばれている。現在はヨーロッパのほかアフリカ、アジア、中南米の45カ国で事業を展開しており、ユーザーは1億人にものぼるという。
また2014年設立のStarship Technologiesは自動配送ロボットのパイオニア的存在で、世界で自動運転配送ロボットによる500万件のデリバリーを行った実績を持つ。エストニア企業であるが、本社を米カリフォルニア州サンフランシスコに置いている。
以下はStarship Technologiesの自動配送ロボットを紹介しているYouTube動画だ。
両社が提携することにより、さまざまな注文品のサイズや距離に対応した幅広い配送オプションを、手頃な価格で提供することが可能になるという。可能な限り簡単で迅速な自動運転デリバリーを実現したいと考えており、ユーザーはアプリでボタンをタップするだけで簡単にデリバリーのオーダーができ、自動配送ロボットが到着したら、別のボタンをタップするだけでロボットのドアを開け、商品を受け取ることができるようになる。
なおBoltのJevgeni Kabanov社長は、より多くの顧客がこれまでより手頃な価格でデリバリーを利用できるようにすることで、将来的にStarship Technologiesとの協力関係が拡大する可能性があることにも言及しているようだ。
■環境への配慮にも力を入れるBolt
Boltは、今年で設立10年になる。それにあたり、同社アフリカ地域マネージャーがこれまでを振り返っている。
ライドヘイリング業界においてこれまでで最も顕著な変化は、ドライバーが注文を無線で受けていたことからアプリでの注文に切り替わったことだとしている。またUberについては、「Uberが自治体にプライベート・ドライバー・サービスを解禁させたことで、サービスの認知度が高まり、Boltの参入が容易になった」と語った。
今後については、同社の環境担当マネージャーが「Boltの使命は自動車ではなく、人々のための都市をつくること」だとしており、2023年に設定した環境目標を紹介している。
2040年までにネットゼロ(温室効果ガスの排出が正味ゼロ)にすることや、2030年までに廃棄物の90%をサーキュラー・エコノミー(循環型経済)にすること、オフィスや倉庫などで再生可能電力を使用することなどだ。
■エストニアが自動運転デリバリーの先進国に
エストニアでは、すでにケンタッキーフライドチキン(KFC)と、同国で自動運転モビリティ開発を手掛けるClevon(クレボン)、フードデリバリープラットフォームを展開するFudyの3社がタリンでフードデリバリーをスタートさせている。
Boltの参入により、エストニアでの自動運転ロボットによるデリバリーサービスの開発競争がさらに活気づきそうだ。今後の展開にも引き続き注目していきたい。
▼Bolt公式サイト
https://bolt.eu/
▼Starship Technologies公式サイト
https://www.starship.xyz/
【参考】関連記事としては「自動運転で無人配送、ケンタッキー(KFC)が北欧エストニアで実現」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)