UAM・AAMとは?空飛ぶクルマの略称表記解説(2023年最新版)

次世代空モビリティめぐる呼称

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出典:国土交通省

本格実用化に向けた取り組みが世界各地で進められている空飛ぶクルマ。その認知度は徐々に高まり、実用化を待ち望む声も各地で上がっている。

その一方、「空飛ぶクルマ」と聞いて「え?クルマが空を飛ぶの?」と疑問に思う人もまだまだ少なくない。空飛ぶクルマという呼称から連想されるモビリティの姿は、一様ではないのだ。

こうした中、一部で空飛ぶクルマを「AAM」や「UAM」などと称する取り組みが広がり始めているようだ。誤認を防ぎつつ、国際協調を図る上ではAAMに軍配が上がりそうだ。

AAM・UAMを中心に、空飛ぶクルマの呼称・定義について解説していく。

■空飛ぶクルマをめぐる呼称
空飛ぶクルマ=eVTOL

「空飛ぶクルマ」と耳にした際、どのようなモビリティを思い浮かべるだろうか。ある程度知識を有する人であれば、恐らく大半は垂直離着陸が可能なeVTOLが頭に浮かぶのではないだろうか。

なお、eVTOLは「electric Vertical Take-Off and Landing aircraft」の略で、「電動垂直離着陸機」を意味する。

しかし、予備知識が全くない人であれば、字面の通り、地上を走行する自家用車のようなクルマが何らかのギミックによって飛行することもできるモビリティをイメージするのではないだろうか。

空飛ぶクルマに明確な定義はなく、「クルマ」という名がつけられているものの必ずしも地上の道路を走行できるわけではない。同様に、必ずしも電動ではなく、垂直離着陸できないモデルも含まれる。

世界ではさまざまなモデルの開発が進められているが、日本国内では空陸両用モデルを前提とした議論はほぼ進められておらず、そのため前者のeVTOLタイプを指すケースが大半だ。

新分野のため定義があいまいで、共通認識の醸成にも至っていないのが現状だが、官民協議会のような公的会議などでは認識を共有することが重要であり、また開発現場や後々の消費者の誤認を防ぐ意味でも言葉の定義・使い方を一定程度統一しておく必要がある。関連法などを定める上でも、定義付けや使用する用語を明確にしなければならない。

【参考】関連記事としては「eVTOLとは?」も参照。

官民協議会は文書内で「AAM」を使用

「空の移動革命に向けた官民協議会」でもこうした議論が進められており、2023年3月に発表した「空飛ぶクルマの運用概念 Concept of Operations for Advanced Air Mobility (ConOps for AAM)概要案」では、空飛ぶクルマを「電動化、自動化といった航空技術や垂直離着陸などの運航形態によって実現される、利用しやすく持続可能な次世代の空の移動手段」と説明している。

その上で、諸外国では「Advanced Air Mobility(AAM)」や「Urban Air Mobility(UAM)」と呼ばれることが多いため、国際協調の観点から空飛ぶクルマを「AAM」と呼ぶこととした。

また、同文書においては、AAMのうち主に都市部で行われる短距離・低高度のAAM運航を「Urban Air Mobility(UAM)」、より長距離を飛行するAAM運航を「Regional Air Mobility(RAM)」と区別するなど、用語の使用を徐々に明確化し始めているようだ。

以下、AAMなどの各用語の概要について解説していく。

▼空飛ぶクルマの運用概念|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001598474.pdf

【参考】官民協議会の取り組みについては「空飛ぶクルマ、ついに2025年ごろ商用化!官民協議会が明記」も参照。

■AAMの概要
AAMは「次世代空モビリティ」の総称

AAMは「Advanced Air Mobility」の略で、意訳すると「次世代空モビリティ」となる。官民協議会によると、日常生活における航空の役割を変え、空の移動革命を実現するためのさまざまな革新的航空技術を含んでおり、例としてeVTOLが挙げられている。

陸上における次世代モビリティが非常に多岐に渡るように、次世代空モビリティという言葉通りに考えれば、その枠はeVTOLにとどまらず、既存の概念に収まらないような飛行技術を有するモビリティもAAMに含まれることになりそうだ。

eVTOLは、電力を動力源に垂直方向に離着陸することが可能な航空機で、従来の航空機と比較し運航時のゼロエミッションや運用コストの削減、騒音の低減など、多くの潜在的メリットがあるという。

マルチロータータイプや固定翼を備えたモデルも

AAM向けの機体としては、「マルチロータータイプ(Multi Rotor)」や「リフト・クルーズタイプ(Lift+Cruise)」、「ベクタードスラストタイプ(Vectored Thrust)」が挙げられている。

マルチロータータイプは、ほぼ垂直な軸周りに回転する3つ以上の電動回転翼によって主な揚力や推進力を得るものを指す。複数のモーターの回転速度を変化させることで、各回転翼(ローター)から推力や反トルクが生じ、ローターの位置関係や回転方向、ローターのピッチ順逆といった要素からなる構造的要因によってさまざまな方向へのトルクを生み出す。巡航時のバッテリー消耗が激しく、短距離移動に向いている。

リフト・クルーズタイプは、マルチローターのほか固定翼と推進用プロペラを有し、垂直離着陸時と巡航時で異なる推進システムを用いるのが特徴だ。離着陸時はマルチローターで上向きの推力を発生させ、巡航時は前向きのプロペラを使用して水平飛行を行い、固定翼によって必要な揚力を得る。固定翼で揚力を得ることで巡航時のエネルギー効率を高めることができ、マルチロータータイプと比べより長距離の飛行に適しているという。

ベクタードスラストタイプは、巡航用の固定翼を有し、垂直離着陸時と巡航時で同一の電動推進システムを用いるものを指す。離着陸時は、垂直方向に配置されたプロペラなどによって上向きの推力を得て、巡航時はプロペラなどを傾けることで前方への推力を発生させ、固定翼によって揚力を得る。前の2タイプと比較し、より高い巡航速度と距離を実現できる可能性があるという。

SkyDriveや中国Ehangなどの機体は固定翼を持たない一方、米Joby AviationやWiskなどの機体は固定翼を備えている。よく見るとさまざまな違いがあるのだ。

UAMは短距離・低高度のモデル

AAMのうち、主に都市部で行われる短距離・低高度の運航モデルをUAM、より長距離を飛行する運航モデルをRAMと称している。

UAMとRAMそれぞれのテリトリーは明確に区分されていない。航行可能距離のほか、飛行する高度などにも差異が付けられるものと思われる。短距離のUAMは、一般的なドローンの飛行高度(150メートル未満)より高い高度を飛行することになるが、RAMはさらに上空を飛行することが想定される。

純粋なバッテリー動力のAAMの多くは航続距離が100キロ未満で、固定翼を備えたモデルなどでも200キロ前後としている機体が多い。

一方、ハイブリッド方式などを採用したモデルは数百キロの飛行が可能という。こうしたモデルがRAMに位置付けられることになりそうだ。

例としては、SkyDriveの開発モデルはUAMに属する。一方、ホンダが開発を進めるガスタービンとのハイブリッドモデル「Honda eVTOL」はRAMに属するものと思われる。

【参考】SkyDriveについては「SkyDriveの空飛ぶクルマ、「2億円」はお買い得?」も参照。

【参考】ホンダのeVTOLについては「ホンダの空飛ぶクルマ戦略とは?(2022年最新版)」も参照。

空陸両用モデルの開発も

「空飛ぶクルマ」のイメージ通り、陸上走行と飛行を両立したモデルの開発も進められている。まさに「Flying Car」だ。

多くのモデルは翼が格納されるギミックを搭載しており、陸上走行時は翼を収納した状態で公道を走行する。保安基準をしっかりと満たし、高速道路における走行を可能にしているモデルや、3輪モデルなどもある。

飛行する際は、格納された翼を広げ、滑走路を使用して加速した後に飛び立つモデルが多いようだ。もちろん、米スタートアップのAlef Aeronauticsが開発する機体のように、翼を持たず垂直離着陸を可能にしたモデルもある。

こうしたモデルも本質的にはAAMに含まれることになる。ただ、仕様・用途が大きく異なるケースも出てくるため、どのように分類していくかがカギになりそうだ。

【参考】Alef Aeronauticsについては「空飛ぶクルマ、米Alefが「廉価版」を約500万円で発売予定」も参照。

■航空法上の定義
航空法上、AAMは未分類

航空法では、航空機の種類について飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船、その他政令で定める機器と定義されている。当然ながら、AAMが明確にあてはまる分類はない。耐空類別も同様だ。

国際民間航空機関(ICAO)においても空飛ぶクルマを明確に区分する定義は未整備の状況で、各国はICAOが規定する国際標準などと整合を図りながら法整備を進める構えだ。また、連邦航空局(FAA)や欧州航空安全機関(EASA)も標準化を進めている。ISOやSAEといった標準化機関でもAAMに関する議論が進められているようだ。

法整備においては、さまざまなタイプが存在するAAMをどのように分類するかが必須となる。空陸両用のフライングカーについても、どのようなカテゴライズがなされるのか、注目していきたい。

■【まとめ】空飛ぶクルマかAAMか……?

「空飛ぶクルマ」というキャッチーな言葉は、まだ見ぬ将来技術やサービスを多くの人に認知してもらうのに非常に有用だが、その反面言葉が持つイメージに引きずられ過ぎる可能性がある。一方、AAMは普通に見聞きしただけでは意味が通じず、コンシューマーまで理解を広げるには時間がかかりそうだ。

さまざまなタイプが存在する空飛ぶクルマ・AAMだが、最終的にどのように類型し、分かりやすくかつ適切な名称で浸透を図っていくのか、こうした観点にも注目していきたい。

【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは?(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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