近年、自動運転車やEV(電気自動車)をはじめとした先進自動車の開発が進み、障害物の検知やペダルの踏み間違い抑制システム、外部とつながるネットワークシステムなど、非常に多くの機能が搭載されている。ということは当然、多くの電子機器が使用されている。
多様な電子機器は先進自動車、いわば「未来の車」の可能性を大きく広げる一方、電磁波を発生するため、ほかの電子製品の誤作動や機能障害を引き起こす可能性もある。万が一自動車でそのようなことが起こったら、命の危険性も否定できない。
そこで活躍するのが「電磁両立性(EMC)システム」だ。電磁エネルギーの発生や伝播、受信を抑制するシステムで、電子システムを正常に機能させるためには必要不可欠な要素だ。
英国を拠点とする自動車メーカーのジャガー・ランドローバーは、EMC研究施設を開設したことをこのほど発表した。施設では電波干渉に関する実験を行うといい、「未来の車」開発を支える存在となりそうだ。
■研究施設には2つの無響室を完備
ジャガー・ランドローバーの研究施設は、先進的な自動車の開発を見据え、法規制と品質基準を満たすことを目的に設立された。
研究施設には2つの無響室があり、一方にはエンジニアが高速で車両をテストできるローリングロード、もう一方にはバッテリーやモーターといった個別の構成部品の性能を評価するための機器を備えているという。
なお、この施設でEMC試験を行う車両の機能には、BluetoothやGPS、WiFi、4G、5G、アダプティブクルーズコントロール、ワイヤレス充電、ブラインドスポットモニターなどが含まれるという。
この施設で初めて試験を行ったのは、2022年5月に発表した同社の新型レンジローバースポーツのようだ。ちなみにこの車種には、道路状況に合わせた操作をするダイナミックエアサスペンションや、カーブのハンドリング性能を高めるトルクベクタリングなどの先進技術のほか、空気清浄テクノロジーやWi-Fi接続機能などが搭載されている。
■EMCはジャガー・ランドローバーに不可欠
ジャガー・ランドローバーは、2008年にインド最大の自動車メーカーであるタタ・モーターズの子会社となった。
2021年には新たなグルーバル戦略として、再生を意味する「Reimagine」を目標に掲げ、今後さらにEV導入に力を入れることを発表した。2039年までには製造から販売に至るまでの排出ガスをゼロにすることを目指している。
EMC試験の充実は、EV拡大を図るジャガー・ランドローバーにとって必要不可欠であると言えよう。
■先進自動車を支える存在に
自動車業界は日々進化し、車両のデジタル化が急速に進んでいる。EMCの試験は品質や安全性、快適性を求める上で必要性が増大しているといえよう。
EMCの研究施設は自動運転車やEVを支える存在として今後ますます重要な存在となるだろう。
【参考】関連記事としては「東陽テクニカ、中国で大型受注!コネクテッドカー向けの無線通信性能計測システム」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)