屋内用デリバリーロボットの本格実用化が日本国内でも始まるようだ。
三井不動産らが開発を進めるオフィスビル「東京ミッドタウン八重洲」で、DX化推進の一環としてデリバリーロボットをはじめ清掃ロボットや運搬ロボットを導入する計画が2022年4月27日までに発表された。
東京ミッドタウン八重洲は、どのような形でロボット導入を図っていくのか。取り組み概要に迫る。
記事の目次
■東京ミッドタウン八重洲における取り組み概要
ロボットフレンドリーなオフィスビルに
東京ミッドタウン八重洲は、東京駅東側エリアの新しい「核」として開発が進められているオフィスビルで、2022年8月に竣工し、同年9月に商業施設部分を先行オープンした後、2023年3月にグランドオープンを迎える予定だ。
東京駅前最大級のオフィスフロアに加え、ホテルやフィットネス、コンビニ、会議室、地下の商業ゾーンなど、オフィスワーカーをサポートする環境・サービスを豊富に備えている。
DX化に資するロボット導入に向けては、オフィスビルにおいてロボット導入の障壁となっていた「垂直移動」と「水平移動」を実現するため、自動ドアの積極的な活用に加えエレベーターやセキュリティドアとの通信や連携を可能にする。
これによってロボットの完全自律走行が実現し、実証実験にとどまらない本格的な導入を可能にした。三井不動産は「ロボットフレンドリーなオフィスビルを目指す」としている。
オフィスビル初のデリバリーロボットを本格導入
ロボットは、オフィスワーカーのユーザビリティ向上を目的としたデリバリーロボットをはじめ、ビルメンテナンスの省人化に資する清掃ロボットや案内ロボット、運搬ロボットなどが導入される予定だ。
デリバリーロボットは、アスラテックが取り扱っている香港スタートアップRice Robotics製の配送ロボット「RICE」を使用する。RICEは屋内向けの配送ロボットで、ホテルやオフィスビル、病院、マンション、飲食店など、屋内のさまざまな施設で活用することができる。
東京ミッドタウン八重洲館内に店舗を設ける飲食店のテイクアウト商品のデリバリーに対応するほか、Uber Eatsなど屋外からのデリバリー商品もオフィスロビーで配達員から商品を受け取り、ビル内を自動運転で走行して注文したオフィスワーカーのところまで届ける役割を担う。
三井不動産やアスラテックによると、オフィスビルでロボットによるフードデリバリーサービスが本格導入されるのは初という。
【参考】RICEについては「香港からの「黒船」、自律走行ロボ「RICE」が国内上陸!どんなロボット?」も参照。
清掃や運搬ロボットなども
清掃ロボットは、パナソニックの「RULO Pro」を導入し、オフィスビル共用部を中心に床面清掃の自動化を図る。片側約25メートルを検知可能な長距離レーザーセンサーを搭載しており、会議場などの広い空間の清掃にも対応する。掃除したいエリアをスキャンし、走行地図を自動作成する機能なども備えているようだ。
運搬ロボットには、Doog製の「サウザー」が採用された。サウザーシリーズは、自動追従機能やライントレース機能、周囲の環境を記憶して自律走行するメモリトレース機能などによって、人の運搬作業を補助する。カスタマイズ性が高く1台何役もの使い方ができるという。
東京ミッドタウン八重洲では、大容量で小回り性に優れる新製品の「サウザーライト」に専用の荷台を搭載したものを導入するという。
運用プラットフォームにはTIS製「RoboticBase」を採用
各種サービスロボットの運用プラットフォームには、TIS製の複数ロボットを統合管理可能なプラットフォーム「RoboticBase」が採用された。TISによると、ロボットを活用した次世代ビルオペレーションを前提とした構想企画検討フェーズから業務・システム要件定義、開発・実証を支援し、サービスロボットインテグレーターとしてDXをロボティクスで実現する「DX on RoboticBase」を導入したという。
サービスロボットをインテグレーションするための統合管理機能を備えたソフトウェアで、運搬や清掃、案内、警備など種類の異なるサービスロボットやセンサー、カメラ、サイネージといったIoTデバイスを統合管理する基本機能を備え、エレベーターやセキュリティドアなどとの設備連携や企業システム、外部データとの連携なども実現する。
【参考】RoboticBaseについては「自動運転配送ロボと在庫管理システムを連携!TISと会津大が実証実験」も参照。
これらのロボットを東京ミッドタウン八重洲で導入するにあたり、「日本橋室町三井タワー」での実証実験を行ったという。
■【まとめ】ロボット導入に向けた取り組みが加速
導入に先立ち、三井不動産は日本橋室町三井タワーで実証実験を行うなどすでに本格運用に向けた準備を進めている。また、東京ミッドタウン八重洲では5Gを活用したより高度なロボット運用も検討していく方針のようだ。
多くのビルや開発エリアを抱えるディベロッパーがロボット導入に本腰を入れる意義は非常に大きく、東京ミッドタウン八重洲を先行事例にさまざまなビルへ取り組みが波及していく可能性が高い。
森ビルや森トラスト、三菱地所、ソフトバンクなど各社が同様の取り組みを進めており、ロボットフレンドリーな社会は意外と早く訪れるのかもしれない。
【参考】関連記事としては「新規参入相次ぐ!自動配送ロボット、国内プレーヤーの最新動向まとめ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)