国立情報学研究所(NII)の研究チームは2021年11月19日までに、自動運転システムのシミュレーションにおいて、事故につながる重大な問題が発生するシナリオを効率的に自動で見つける技術を開発したと発表した。
衝突が起きる状況、加えて速度超過や急ハンドルも複合的に関わる状況を最重大問題とし、その状況に至るシミュレーション設定の探索を実施。ある程度の探索を行った後、十分探索しても特定の問題が見つからない場合には探索の優先度を下げるという。
逆にそれまで探索を試していなかった問題やより重要な可能性が考えられる場合についての優先度を上げ、起こりうる重大な問題を探索できるよう目的を再設定する。目的の見直しを随時実行することがポイントだという。
■重大な状況だけを効率よく検証
交通状況の変化が多様な市街地などで自動運転を実用化するには、他車や歩行者に接触しないという安全性はもちろんだが、同時に加減速や曲がり方の度合い、走行レーンの遵守など複数の観点から進行方向や速度を決める必要がある。
そのため、考えられるシナリオを幅広く洗い出し、シミュレーターを用いて検査することが必要とされる。
しかし、たとえば交差点右折という1つのシナリオにおいても、シミュレーション設定は膨大となり、すべての問題の可能性をむやみに探索することは無駄なシミュレーションを増やすだけだという課題があった。
今回の技術により効率的なシミュレーション検出が可能になる。
■自動運転社会実現への貢献に期待
NIIのアーキテクチャ科学研究系・石川冬樹准教授らの研究チームの開発は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業「ERATO」に採択されている研究プロジェクト「ERATO MMSD」のもとで実施された。
マツダから提供された経路計画プログラムに対して適用し、シミュレーションで実証したという。石川准教授は「今後は、最新の標準化動向や、自動運転技術の適用先によって異なるニーズを踏まえ、開発した技術を大きく展開・ 実証していきたい」とコメントしている。
現在日本では、高速道路の渋滞時やある定められたルートなど限られた場合のみ運転手がアイズオフできる「自動運転レベル3」の機能を持つ車種も販売されている。今後、自動運転レベル4、5と段階を上げていく上で、今回発表された技術は大いに役立ちそうだ。
【参考】関連記事としては「自動運転のリアルタイム制御に応用可!改良BVI法、国立情報学研究所の研究チームが開発」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)