米小売大手のウォルマートは2021年11月8日、同社の配送ルートにおいて完全無人の自動運転トラックを導入したことを発表した。「セーフティドライバー」と呼ばれる安全要員を乗せずにトラックを走行させている。ウォルマートはこの取り組みを「世界初」としている。
使用している車両は、米ベンチャーのGatik(ガティック)社の中距離向け自動運転トラック。両社は18カ月間にわたって実証実験を行い、当初はセーフティドライバーを乗せていたが、今年8月から完全無人でトラックを走らせているという。
報道などによると、走行しているルートは物流センターと米南部アーカンソー州のWalmartの店舗の間の約7マイル(約11キロ)。2台の自動運転トラックが1日12時間稼働しているという。ちなみにこうした拠点間の配送を、アメリカなどでは「ミドルマイル配送」と呼ぶ。
GatikのGautam Narang最高経営責任者(CEO)は「今回のマイルストーンは、自律走行トラック業界にとって革命的なブレークスルーを意味する」と語っている。
■ボックストラックの自動運転化に注力するGatik
Gatikは2017年創業のスタートアップで、自動運転に関する知識を有したエンジニアたちによって設立された。米カリフォルニア州マウンテンビューとカナダのトロントに開発拠点を構え、ミドルマイル配送に焦点を当て、ボックストラックの自動運転化に力を入れてきた。
2021年4月には米経済誌フォーブスの「注目すべきAI企業トップ50」に選出されるなど最近注目度を高めている。累計の資金調達額は1億1,450万ドル(約129億円)で、IPO(新規株式公開)の話はまだ聞かれないものの、今後の上場が噂されているベンチャー企業だ。
すでにGatikの自動運転ボックストラックは今回のアーカンソー州を含み、アメリカの複数の州で商業展開されている。
■2027年には、自動運転車が食料品配送の主役に
国際的な民間調査会社の米Guidehouseに所属するあるアナリストは、少なくとも2027年には、食料品の配達を担っているのは人より自動運転車の方が多くなるという予測を披露している。
ちなみにアメリカではWalmartだけではなく、同じく小売大手のKroger(クローガー)も自動運転配送の導入に向けて動いている。こうした小売大手の今後の動向に、引き続き注目していきたい。
【参考】関連記事としては「自動運転で「ミドルマイル物流」に照準!米Gatikの存在感急上昇」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)