トヨタも愛した23歳の神童CEOの正体 自動運転の目「LiDAR」と米ルミナー

オースティン・ラッセル氏が近づける未来

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自動運転業界では、スタートアップ企業による技術革新が目覚ましい。そんなスタートアップ企業の中で現在ひときわ注目を集めているのが、車両の周辺環境を検知する高精度センサーLiDAR(ライダー)の独自開発を進める米ルミナ―・テクノロジーズ(Luminar Technologies)社だ。そのルミナー社を率いるのが「神童」の名を欲しいままにしてきた若干23歳のオースティン・ラッセル氏である。

■ルミナー社を率いる天才、オースティン・ラッセル氏

ルミナ―社は2012年に設立され、2017年には3600万ドル(約40億円)という大規模な資金調達を成功させている。そのルミナ―社を率いるラッセル氏は幼いころから神童として注目を集め、16歳からアメリカの名門スタンフォード大学で物理学の研究に取り組んだ。

彼を支援したのは「ティール・フェローシップ」だ。トランプ米大統領の技術顧問も務めた米国の投資家ピータ・ティール氏が主催する若手起業家向け研究奨学金制度で、ラッセル氏は大学を中退し、この研究奨学金を原資にルミナー社を創業し、事業に傾倒していった。

【参考】ピータ・ティール氏はシリコンバレーの天才起業集団の中でも「ドン」と呼ばれ、若手企業家の支援に力を入れてきた。ティール・フェローシップには、仮想通貨として世界第2位の流通量を誇るイーサリアムの創業者ヴィタリック・ブテリン氏も参加していたことで知られる。プログラムに参加するには、大学を中退することが条件の一つとなっている。

■ルミナー社が手掛けるAI自動運転車の「目」LiDAR

ラッセル氏はスタンフォード大学在学中に物理学を学びながら、数多くの光工学分野のプロジェクトに参加し、その腕を磨いていった。その経験がルミナー社が開発するLiDARに活かされている。

ルミナー社が開発しているのは低価格タイプのLiDARシステムだ。LiDARは自動運転車の「目」と呼ばれるほど重要なコアセンサーの一つだが、開発には多大なコストを必要としていた。ルミナー社の自社技術によって低価格化が実現すれば、これまで莫大な費用が必要とされていたLiDARシステムの生産コストが数百ドル程度で下がると言われている。

【参考】LiDARの開発競争や価格競争については「自動運転の「目」は800万円!?次世代センサーLiDARの最前線を追う|自動運転ラボ 」も参照。自動運転に必要とされるコアセンサーについては「自動運転の最重要コアセンサーまとめ LiDAR、ミリ波レーダ、カメラ|自動運転ラボ 」も参照。

さらに単にコスト削減に成功するだけでなく、ルミナー社のLiDARシステムは従来よりも50倍以上優れた解像度を誇り、10倍以上離れた距離にある対象物を認識することができるという。トヨタ自動車も既にルミナー社製のLiDARの技術力を認め、既に採用を決めている。

■優秀な技術者の輩出地、スペースコーストに拠点

こうした高い技術力をルミナー社が実現しているのは何もCEOオースティン氏の才覚によるだけではない。ルミナ―社が拠点を置く場所や、彼をサポートする周囲の人材も大きな影響を与えているといえる。

ルミナー社は米フロリダ州オーランドに拠点を構え、ケネディ宇宙センターがある「スペースコースト(宇宙海岸)」というエリアに本社を置いている。アメリカ航空宇宙局(NASA)などもこの地域で航空宇宙関連技術の開発を進めていることでも知られ、優れた技術者を輩出する一大基地としての側面を持つ。

ルミナー社では、スペースコーストやシリコンバレーで技術を磨いたエンジニアら数百人以上がLiDARの開発に取り組んでいる。23歳のラッセル氏の指揮の下、自動運転の「目」の低コスト化が日進月歩で進んでいるというわけだ。

自動運転車の普及には販売価格の低価格が必須だ。世界が注目する神童ラッセル氏の手腕により、我々が自動運転車に乗れる日が遠い未来の話ではなくなっていく。

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