政府が2018年6月にまとめる成長戦略の原案で、2030年までに国内新車販売台数の3割以上を自動運転レベル3相当の自動運転車にする目標を掲げたことが、日経新聞の報道などで分かった。2030年の日本国内の自動車生産台数は1000万台規模で推移するとの予測もあり、自動運転車の販売台数が300万台規模に上る可能性もある。
自動運転レベル3は「条件付運転自動化」と定義されており、限定された条件のもとでシステムが全ての運転タスクを実施するが、緊急時などシステムからの要請があれば運転者が操作を行わなければならない。部分的とはいえ運転の主体がドライバーからシステムに移行するため、事故時の責任の所在などについて改めて法整備する必要がある。
【参考】自動運転レベルの定義などについては「自動運転レベル3の定義や導入状況は?日本・世界の現状まとめ|自動運転ラボ
報道によると、自動運転車の普及を柱に、人による運転を前提とする道路交通法の見直しを2020年度までに進める。自動運転で課題となる法整備については検討期間を明記することとし、刑事責任についても2018年度に検討を進める。また、事故原因を明確にするためのデータ記録や原因究明体制に関して、走行データを記録する装置の設置義務も2018年度中に検討するという。
【参考】国土交通省が設置した「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」が2018年3月に発表した「報告書」では、賠償責任について自動運転でも自動車所有者、自動車運送事業者などに運行支配および運行利益を認めることができ、運行供用に係る責任は変わらないこと、また迅速な被害者救済のため運行供用者に責任を負担させる現在の制度の有効性は高いことなどを挙げている。その上で、従来の運行供用者責任を維持しつつ、保険会社などによる自動車メーカーなどに対する求償権行使の実効性確保のための仕組みを検討することが適当であると考えられるとの見解を示している。
【参考】内閣が設置した「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・ 官民データ活用推進戦略会議」が2018年4月に発表した「自動運転に係る制度整備大綱」でも、注意義務違反や因果関係の有無などを判断するためには、事故原因の明確化のためのデータ記録や原因究明体制を構築する必要性が高いとしている。民事責任における求償権行使の実効性確保や、刑事責任などにおける因果関係明確化、車両の安全性の確保を実現するために、走行記録装置の設置義務化や事故原因究明の方策について2020年をめどにデータ記録装置の設置義務化やデータの記録機能などについて検討することとしている。
■2020年には地域限定で公道サービス
このほか技術開発を後押しするため、自動運転を使った公道での移動サービスを2020年までに地域限定で始め、2030年までに全国100カ所での実施を目指すという。
内閣府が2018年4月に発表した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム研究開発計画」によると、2020年をめどに自動運転レベル3の市場化が可能となるよう関係省庁が連携して検討を進めることとしている。