埼玉工業大の自動運転バス、2019年度は2415人の体験試乗者

計652キロ走行、私立大学初のスクールバスも

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出典:埼玉工業大学プレスリリース

自動運転バスの開発を手掛ける埼玉工業大学(本部:埼玉県深谷市/学長:内山俊一)は2020年4月29日までに、同大学の「自動運転技術開発センター」(センター長:渡部大志)の2019年度の活動実績を公表した。2019年度中、同大学で開発された自動運転バスは自動運転レベル3(条件付き運転自動化)で計652キロを走行し、体験試乗者は2415人に上ったという。

埼工大は自動運転の研究・開発に積極的に取り組んでおり、実証実験への参加や体験試乗会を通じ、自動運転技術の実用化に向けて実績を積み重ねている。

この記事では、埼工大が2019年度中に行った活動や、開発中の自動運転車両などについて解説しよう。

■2019年度に行った実証実験は計12回

埼工大の自動運転技術開発センターは、2019年4月から2020年3月までの間で埼玉県をはじめとする全国の自動運転実証実験プロジェクトに参加し、一般車両が走行する公道で7回、全体で計12回の公開実証実験に参加した。

2019年12月に兵庫県南西部の播磨科学公園都市で行われた実証実験には、往復約6キロの公道を運行する車両として自動運転バスを提供した。自動運転のオペレーターを派遣し、運行の技術サポートも行ったという。

2020年1月には、愛知県知多郡南知多町の離島である日間賀島の実証実験にも協力している。この実証実験は「離島における観光型MaaSによる移動」をテーマに据え、NTTドコモが核となる共同体で実施されており、埼工大は自動運転車両の提供と運行における技術サポートを行った。

私立大学としては初の試みとなるスクールバスとしての公道走行も実施した。レベル3による自動運転バスで、大学のキャンパスと最寄り駅であるJR高崎線岡部駅間の公道の約1.6キロを法定速度の時速40キロで走行させたという。当面は既存のスクールバスの臨時便として不定期に走行するが、2020年度以降は本格的な運行を目指している。

そのほか、埼玉県加須市や坂戸市、神奈川県横須賀市などのイベントに参加し、一般の人向けの体験試乗会なども行った。

出典:埼玉工業大学プレスリリース
■埼工大が開発する自動運転バスの概要は?

自動運転技術開発センターは、埼玉工業大学の学長直轄の研究組織として2019年4月に設立された。産官学連携による先進的な自動運転技術の研究・開発を目指しており、2019年8月には私立大学初として、一般公道を走行可能な自動運転バスを公開し、試乗会を開催している。

開発している自動運転バスは、マイクロバス「リエッセⅡ」に「自動運転AI(AIPilot/Autoware)」をベースとしたAI(人工知能)技術を実装した車両だ。この開発は、スマートモビリティの実証を支援する「埼玉県スマートモビリティ実証補助金」に採択されている。

また、同センターの専門分野である画像認識の技術を活かして、自動運転バスに必要なソフトウェアを「SAIKOカーware」として独自に開発しているという。

■【まとめ】AIを活用できる人材育成にも注目

埼工大は全国に先駆けてAI専攻を開設しており、AI(人工知能)を活用できる人材育成にも期待したい。自動運転にはAIエンジニアの存在が不可欠だからだ。埼工大発ベンチャーのフィールドオート社の今後の取り組みにも注目だ。実証実験のサポート事業を手掛け、今後は需要が高まると考えられる。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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