国土交通省が「日本版MaaS推進・支援事業」において、2020年度に実証実験を支援する38事業を選定し、2020年8月5日までに発表した。
有識者の意見も踏まえて選定されたもので、交通以外の分野とも連携し、移動を含めた地域の課題の解決に寄与することが見込まれる事業が選ばれた。
国土交通省は「関係府省とも連携を図りつつ、日本版MaaSの実現に向けた取組を支援していきます」としている。
この記事では選定された38事業の実施されるエリアと、4つのプロジェクトをピックアップして紹介する。
▼日本版MaaSの取組を加速!~新たなMaaSの構築を牽引するモデルプロジェクト38事業を選定~|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo12_hh_000190.html
記事の目次
■今回選定された38事業の実施地域
今回のMaaS実証の支援は「日本版MaaS推進・支援事業」におけるもの。国土交通省はほかにも、AIオンデマンド交通の導入やキャッシュレス決済の導入などで支援を行っており、今回のMaaS実証の支援はこうした支援と並んで同省が取り組むものだ。
まず今回選定された38事業の実施地域は以下の通りだ。
・北海道十勝地域
・北海道洞洞爺湖
・北海道札幌地域
・福島県会津地域
・茨城県ひたち圏域
・茨城県土浦市
・栃木県宇都宮市
・群馬県前橋市
・埼玉県三芳町
・千葉県千葉市
・東京都東村山市
・神奈川県横浜市周辺
・神奈川県横須賀市周辺
・神奈川県三浦半島
・神奈川県川崎市
・神奈川県南足柄市
・富山県朝日町
・石川県加賀市
・長野県茅野市
・静岡県静岡市
・静岡県伊豆半島
・静岡県浜松市
・愛知県春日井市
・三重県菰野町
・滋賀県大津市
・京都府京丹後市
・京都府京都市
・京都府舞鶴市
・大阪府池田市
・兵庫県神戸市
・広島県福山市
・広島県広島市
・香川県高松市
・愛媛県南予地域・松山市
・福岡県糸島市
・宮崎県宮崎市・日南市
・沖縄県全域
・沖縄県宮古島市
■4事業をピックアップして紹介
今回支援対象となったMaaS実証プロジェクトは、各地域において民間企業や自治体、大学、官民コンソーシアムなどによって実施される形となる。38事業のうちの4事業をピックアップして紹介していこう。
COVID-19から地域交通再生を目指した「北海道型MaaS展開事業」(北海道十勝地域)
北海道十勝地域で実施される「COVID-19から地域交通再生を目指した『北海道型MaaS展開事業』」の実施主体は「北海道シームレス交通戦略推進会議」だ。
実験の概要については以下のように説明されている。
地域住民のCOVID-19予防と公共交通利用の両立に向けて、「ヒト」「モノ」「サービス」と移動との一体的・効率的な仕組みを構築するとともに、公共交通利用の促進、地域における新規ビジネスの創造を後押ししていくことで、将来における地域交通の維持・確保をめざす。
具体的にはアプリを活用して、交通サービスチケットなどのデジタル化や目的地と連携した商品作りに取り組むほか、遠隔地の近親者から交通チケットをプレゼントできる機能の導入も進めるという。
また、他人との接触機会を減らして新型コロナ感染症の感染リスクを下げるため、混雑状況の見える化なども推進するようだ。
市民の生活の質と、観光客の移動満足度の向上を実現する「加賀MaaS」実証事業(石川県加賀市)
「市民の生活の質と、観光客の移動満足度の向上を実現する『加賀MaaS』実証事業」は石川県加賀市で実施される。加賀市や地元の交通事業者、経路検索大手のヴァル研究所などが参加する協議会やコンソーシアムが実施主体となる。
実施概要については以下のように説明されている。
乗換案内や予約等の「交通サービス情報の充実」、施設情報やクーポンによる「交通・商業・観光の分野連携」、生活の負担を軽減する「ニーズに応じた運行」等、利用者にとって最適で新しい生活様式に順応したMaaSを実現する。
取り組む内容としては、「加賀MaaSアプリ」の整備や配布、電車やバス、タクシーの位置情報や運行データの整備、キャッシュレス決済の導入などとされている。
実証実験を通じ、移動の負担を軽減することで外出頻度が増加するのか、外出頻度が増加すると満足度は上がるのか、オンデマンド交通と公共交通を活用した対象者別の経済効果、多くの人が移動した際の地域へ与える効果、などを検証していくという。
若年・子育て世帯を主対象とした商業連携モビリティサービス実証実験(愛知県春日井市)
愛知県春日井市で実施される「若年・子育て世帯を主対象とした商業連携モビリティサービス実証実験」は、春日井市や名古屋大学、KDDIなどで構成される「高蔵寺スマートシティ推進検討会」が主体となって取り組まれる。
実施概要については以下のように説明されている。
高蔵寺NT(ニュータウン)の既存公共交通と新モビリティサービスの維持・活性化を目指し、これまでの交通弱者対応に加えて、若年層居住者を対象にMaaSアプリを提供し、来店交通手段別に異なる商業連携クーポンを配信し、自動車利用に依存しないNT内生活を積極的に体験してもらう。
実証実験では、交通手段ごとに異なる商業連携クーポンを配信し、自家用車に依存しないニュータウン内生活を体験してもらうという。若年・子育て世帯モニター100人を対象にMaaSアプリを提供して実施されるようだ。
愛媛県南予地域における観光MaaS実証実験(愛媛県南予地域・松山市)
「愛媛県南予地域における観光MaaS実証実験」は、KDDIや南予広域連携観光交流推進協議会などが連携し、愛媛県南予地域と松山市で実施される。
実施概要については以下のように説明されている。
NFCタグを活用したアプリ不要な観光型MaaS実証実験を実施し、広域版デジタルフリーパス(鉄道、バス、船舶、観光施設等)のキャッシュレス決済を実現する。また、農産品直売所、保険業、飲食業等、航空運輸業、ホテル業と連携し、情報や決済サービスを一体提供することにより、交通のODデータに加え、観光客の周遊・決済データを収集・分析を行う。得られたデータ、知見は協議会構成員が把握し、今後の観光客誘致、交通ネットワーク再構築、まちづくりの参考資料として活用する。
具体的には、近距離無線規格「NFC」のタグの活用によってアプリ不要で利便性の高い観光型MaaSの実現を目指すほか、異業種連携による付加価値創出などに取り組むという内容のようだ。
■【まとめ】より住民に資する取り組みが進む
今回選定された事業の中では、新型コロナウイルス感染拡大の防止に向けた取り組みも盛り込まれているケースが多かった。
こうした視点はWithコロナ時代の移動においては欠かせず、単純な移動の利便性向上だけではなく、より住民に資する取り組みが進んでいくことになりそうだ。
各事業の詳細については、以下のPDFから確認することが可能だ。
▼日本版MaaSの取組を加速!~新たなMaaSの構築を牽引するモデルプロジェクト38事業を選定~|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo12_hh_000190.html
【参考】関連記事としては「MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説&まとめ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)