東京の「マリオカート」が自動運転バスの天敵に?

マイナーなモビリティも認識可?

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出典:Wikipedia Commons (cc-by-2.0)

東京都で自動運転小型EVバスの走行試験がスタートした。自動運転バス自動運転タクシー(ロボタクシー)の実用化に向けての取り組みが進む。

しかし首都圏ではマリオカートのような外見の「公道用カート」が走っている姿を見かけることがある。こうした「水色ナンバー」を取得しているものの一般的な形状ではない車体が公道を走っていると、事前にマリオカートのようなクルマを学習していない自動運転バスは認識の際に混乱するかもしれない。つまり、マリオカートは自動運転車の天敵になるとも言えそうだ。

さらに首都圏では電動キックボードの利用率も高い。電動キックボードは車道の左側を走行する必要があるが、無理な横断など危険走行が問題になっている。こういった新たなモビリティの走行についても視野に入れ、対応可能な自動運転技術をアップデートしていく必要がある。

■マリオカート風のミニカー

マリオカートのような公道走行用カートは、国土交通省により「第一種原動機付自転車(ミニカー)」に分類されている。最高速度は時速60キロ、定格出力0.6kW以下で、サイズは長さ2.5×幅1.3×高さ2.0メートル以下と定められている。普通自動車免許が必要で、乗車人数は原則として1名となっている。

この乗り物が、並んで渋谷などの繁華街を走っていることがある。マリオカートのような見た目に加え、以前はドライバーもマリオのコスプレをしていることが多かった。しかし現在は任天堂の訴訟により、以前のようなマリオのコスチュームを着てマリオカートと称して運行することはできなくなっている。

ただし法律で認められている以上、ミニカーが公道を走行することは問題ない。もし自動運転バスがミニカーを正確に認識できなかった場合、衝突や接触の危険性がありそうだ。

■東急バスが渋谷で実証実験

東急バスは2025年9月29日から10月31日まで、自動運転小型EVバスを用いた走行試験を実施中だ。東急バスが開発し、運用を可能にした車両を使う。この車両は同社がこれまで行ってきた走行試験のノウハウを生かした自動運転機能を備えており、今回の実証実験の走行ルートのように道路状況が常に変化する複雑な走行環境への適応を可能にしたという。

自動運転レベルは「2」で運転席の係員が常時周囲を監視し、目黒区の東急バス本社では遠隔監視を行う。渋谷区の約4.1キロのルートを9〜16時の間に走行するが、一般の利用者の乗車は不可となっている。

出典:東急バス プレスリリース

▼自動運転小型EVバスを使用した渋谷駅周辺エリアにおける走行試験を実施します|東急バス
https://www.tokyubus.co.jp/news/d352981d9b8121be4dfa8f76ca7fd54eb5fc4030.pdf

■実用化までの歩みに注目

各地で小型自動運転バスや、「ポッド型」「シャトル型」などと呼ばれる小型の自動運転車の導入が進んでいる。茨城県の境町では、2020年11月に日本の自治体で初めて自動運転バスの定常運行を実現した。特に地方では、公共の交通手段やドライバーの不足が深刻な課題となっており、自動運転車の導入を目指す取り組みが活発だ。

しかし今回東急バスが実施中の、渋谷区のような日本を代表する繁華街での自動運転バスの実証はまだ珍しい。この取り組みで、同社は日本屈指の交通量の地域において、複雑な走行環境に対し適切な対応を可能とした自動運転システムの機能の検証などを行う。実用化までの歩みに注目だ。

【参考】関連記事としては「日本初!別なバス会社が「一緒に」自動運転実証」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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