天下一品のロゴ、ホンダ車が「進入禁止」と誤認識 ローソンのフェアで再び・・・

アップデートなし?認識機能はおまけ的扱い?

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撮影:自動運転ラボ

ホンダADAS「Honda SENSING(ホンダセンシング)」による”誤認識祭り”が再燃しようとしている。コンビニチェーン大手のローソンが再び「天下一品こってりフェア」を開催したためだ。

すでにSNS「X」上では誤認識が報告されており、「ホンダセンシング×天下一品」をネタにした投稿が今後続く可能性がある。

ホンダセンシング×天下一品問題とはどのようなものか。改めて見ていこう。

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■ホンダセンシング×天下一品問題

2018年ごろからたびたび話題に

ローソンは2024年2月に続き、11月にも「天下一品こってりフェア」を開催している。全国1万を超えるローソン店舗の店先には、再びキャンペーン用のノボリや横幕が掲示されている。

このキャンペーン用素材には、天下一品の企業ロゴも掲載されている。あの「車両進入禁止」にそっくりのロゴだ。

この小さなロゴを、ホンダセンシングは見逃さない。どんなに小さかろうと車載センサーに収まったからにはしっかりと検知・識別し、ドライバーに教えてくれるのだ。「車両進入禁止です。注意してください」……と。

天下一品のロゴを車両進入禁止に誤認識する事例は、2018年ごろから指摘されていた。天下一品のロゴの誤認識に気付いたホンダオーナーがSNSに投稿し、その内容の面白さから話題となったのだ。

なお、ホンダの「CSR レポート 2014」によると、標識認識機能は2013年度に欧州向けの「Civic Tourer」に初搭載されたようだ。おそらく日本国内向けのモデルへの搭載は2014年度ごろに始まったものと思われる。ホンダセンシングの実用化(2015年)よりも先だ。

話題になるまでに結構なスパンがあるが、それまで誰も気づかなかったのか。あるいは気づいても「まあいいや」で済ませていたのか。標識認識機能は、車載カメラが検知した一部の道路標識をディスプレイに小さく表示させるだけの機能のため、気づかなくてもおかしくはない。気づいたとしても特に影響はないため、「ふーん」くらいのものだろう。

ただ、ラーメン屋のロゴを道路標識に間違うという点と、ロゴがあまりにも車両進入禁止と酷似していたため、面白さが勝って話題となったのだ。

その後、ブームは去ったものの、ローソンが「天下一品こってりフェア」を仕掛けたことで再び火が付いた。全国1万を超える店舗網を持つローソンの店先に天下一品のロゴが掲示されたことで、遭遇率が大きく高まったのだ。ローソンを訪れた際に誤認識し、「店にクルマが入れない(笑)」といった冗談めかした投稿がSNSに集まった。

こうした誤認識は他メーカーのADASにも波及し、100円均一のロゴなどさまざまなオブジェクトを巻き込みながらプチブームに発展していった。

ブームはいったん落ち着いたかに思われたが、このタイミングでローソンが再び「天下一品こってりフェア」を仕掛けたことで、誤認識具合を確かめる投稿が出始めている。

ホンダをはじめ、各社が標識認識機能の改善を図らない限り、この動きは延々と続くのかもしれない。

【参考】ホンダ×天下一品については「天下一品のロゴ、ホンダ車が「進入禁止」と再び誤認識」も参照。

標識認識機能は軽視されている?

ホンダを例に挙げると、標識認識機能はその登場から10年が経過しているが、特にアップデートされていないように感じられる。むしろ、アップデートをかたくなに拒否しているかのようだ。現状の標識認識機能はおまけ的な存在であり、ADASの中では重要視されていないためだろうか。

それとも、ADAS向けのカメラのスペックでは車両進入禁止の標識と天下一品のロゴを確実に見分けるのは難しいのだろうか。

ホンダセンシングは、前方に取り付けられた広い水平画角を誇るフロントワイドビューカメラで前方から側方まで幅広く周囲のオブジェクトを検知する。前後のソナーセンサー(またはミリ波レーダー)も搭載されている。

このフロントカメラの質・解像度がどれほどのものかはわからないが、最低限の自動運転レベル2まで対応することを前提に考えれば、標識を厳格に識別できなくても不思議ではない。

アダプテッドクルーズコントロールとレーンキープアシストの実現だけを考えれば、道路標識を明確に識別する解像度は必要ないからだ。

もちろん、ホンダが搭載するカメラはノボリなどにプリントされた小さなロゴまで認識するのだから、高性能と言っても良いだろう。ただ、判定が間違っているだけだ。そう考えると、やはりソフトウェアに問題があるのかもしれない。

天下一品識別はE難度?

撮影:自動運転ラボ

では、ホンダのソフトウェアは車両進入禁止の標識と天下一品のロゴを見分けることができないほど低水準なのか?──と疑問に思うかもしれないが、一概にそうとも言い切れない。

ご存じの通り、天下一品のロゴは車両進入禁止の標識に酷似している。インスパイアされてデザインしたのか?──と思うほどそっくりだ。仮に、このロゴを本物の道路標識同様ポールの上に設置した場合、おそらく人間のドライバーも車両進入禁止と誤認するケースが続発するのではないかと思う。それほど似ているのだ。

この天下一品のロゴを識別するためには、色合いや全体の形は判断材料にならない。形は道路標識同様真円で、色合いもほぼ同じだ。わずかな色合いの違いは誤差として捉えなければならない。

唯一異なるのは、赤丸の中に白抜きされた「一」の文字だ。車両進入禁止の標識がきれいな長方形で白抜きされているのに対し、天下一品は筆で描いたようなかすれた「一」の字がデザインされている。普通に人間の目で識別可能なレベルだ。

この違いをAIに学ばせ、明確に識別すればよいのだが、そのためには一定水準以上のカメラの解像度が必須となる。やや離れた場所にあるロゴ・標識を識別するためには、相応のスペックが必要となる。

しかし、ここで一つの問題にぶつかることになる。許容すべき誤差範囲の設定だ。本来、車両進入禁止の標識を識別するだけであれば、真円の中に規定割合の長方形が白抜きされたデザインを明確に選別すればよいだけである。

しかし、この識別をシビアに行い過ぎると、やや斜めの角度で設置された標識や汚れた標識、光が反射した標識などを見落とす可能性がある。シビアに判定し過ぎると、正しい標識さえもはじかれる可能性が生じるのだ。

こうしたイレギュラーなパターンは定まっていないため、それを踏まえて道路標識のみを識別するのは難しい。判定においては一定の遊びが必要なのだ。

こうなると、もはや天下一品のロゴをAIに学ばせるしかない。天下一品のロゴパターンを特別に識別可能にすることで、道路標識の許容誤差の中からそれをはじく手法だ。100%は難しいかもしれないが、精度を向上させることができる。

そこまでしないと、ホンダセンシング×天下一品の問題は解決しないのではないだろうか。センサーの解像度アップとソフトウェアアップデート(天下一品に対応)が待たれるところだ。

自動運転を前提にすると対策は必須

ADASにおける標識認識機能でそこまでする必要があるのか?――と問われそうだが、その延長線上に自動運転があることを考慮すれば、対策して然るべきともいえる。

自動運転においては、こうしたパーセプション技術は最重要技術となる。道路上や周囲のオブジェクトをいかに正確に識別するかが安全を左右するためだ。天下一品のロゴを正確に認識しなければならないわけではないが、そのくらいの判別技術がないとその他のオブジェクトの判別も怪しくなる。

標識を認識するだけなら、高精度3次元地図にすべての標識を事前に落とし込んでおけば事は足りる。しかし、こうした手段に甘えることなくパーセプション技術を向上させてこそ、応用力が磨かれていくのではないだろうか。

標識の誤認識はADASにおいては笑い話で済むかもしれないが、自動運転においては真剣に解決しなければならない問題なのだ。

TuringはマルチモーダルAIで解決

こうしたパーセプション分野において、新たなアプローチを試みる動きも出ている。自動運転開発スタートアップのTuringは、複数言語対応の大規模マルチモーダル学習ライブラリ「Heron(ヘロン)」の開発を進めている。

画像と言語という別次元の情報を取り扱うことができるモデルだ。一般的な大規模言語モデル(LLM)のようなテキストによる入出力に加え、視覚情報である画像も入力情報として取り扱うことができる。

つまり、人間同様に画像からさまざまな情報、状況を読み取り、理解可能にしようというのだ。画像内に含まれる文字情報をはじめ、シチュエーションなども理解することで、AIの判断能力を高める取り組みだ。

同社でAI開発ディレクターを務める山口祐氏は、Xで「先日公開したHeron、何がすごいかって「進入禁止」と「天下一品」を区別できるんですよね」とポストしている。画像の情報をもとに、周辺の意味情報も踏まえた上でこれがラーメン屋の看板だと理解できるようになっているという。

■誤認識しやすいロゴ・マーク

100均ロゴが速度標識に誤認されるケースも

SNSを見ると、天下一品以外にも標識認識機能が誤認識したケースはいろいろ出ているようだ。企業ロゴでは、エネオスや太陽生命、ピザハットなども誤認対象となり得るようだ。それぞれ、赤地に白抜きという特徴が共通しており、天下一品同様車両進入禁止に誤認される。

また、セリアやキャンドゥなどの「100円均一」を示すロゴも誤認率が高いようだ。100円玉をモチーフにしたようなデザインで、丸いロゴの中に数字で100と記載されており、これが時速100キロを示す「最高速度標識」に間違われるようだ。

【参考】標識認識機能の誤認識については「車が「誤認識しやすいロゴ」、ランキング1位は?事例など踏まえ独自分析」も参照。

車が「誤認識しやすいロゴ」、ランキング1位は?事例など踏まえ独自分析

■【まとめ】解決に向けそろそろ本腰を……

面白ネタ扱いではあるもののたびたび話題となってしまうだけに、そろそろホンダも解決に向け本腰を入れてみてはどうか。

おそらく、技術的には解決済み、あるいは解決可能な水準の識別能力をすでに有していると思われるが、実装されないのはなぜか。

最新ADAS「Honda SENSING 360」で解決済みかどうかは不明だが、こうした裏話をオウンドメディアで披露してみてはどうか。技術の仕組みや実装課題などに触れることができ、非常に興味深い内容となりそうだ。ホンダの取り組みに期待したい。

【参考】関連記事としては「ホンダの自動運転レベル3、「3年前の1車種」のみで開発中止か」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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