死亡事故率、時速50km台だと「20km台の31倍」 自動運転に許される「上限速度」は?

米国では時速100km以上も許容

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自動運転車の実用化に向けての取り組みが本格化している。自動運転車を走行させる場合、決めなければいけないのが上限速度だ。手動運転の場合、時速50km台だと死亡事故率は時速20km台の31倍になるというデータがあるが、こうしたデータに基づくと、自動運転車に許される上限速度はどの程度が適切なのか。

日本ですでに定常運行されている自動運転バスは、時速20キロ程度で走行しているものがほとんどだ。それに対し、米国で商用運行しているWaymo自動運転タクシーは、一定条件下で最高時速65マイル(約105キロ)まで認められている。

自動運転車の上限速度を考えるにあたり、従来の人間による運転における速度別の事故率について調べてみた。

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■交通事故総合分析センターによる死亡事故と速度の関係

やや古いデータにはなるが、財団法人交通事故総合分析センターでは2009年に「低速域歩行者 死亡事故の特徴」についての特集を行っている。

出典:交通事故総合分析センター(https://www.itarda.or.jp/contents/459/info79.pdf)

事故の危険度を表現する指標として死亡事故率がある。死亡事故率は下記の式で算出する。

死亡事故率(%)=死亡事故件数÷死傷事故件数×100

当たり前だが、速度が上昇するにつれ事故率は高くなる。速度の出し過ぎは視野が狭くなり、衝撃力が増加するからだ。自動車と歩行者が衝突した場合、衝突時の速度が時速30キロを超えると歩行者の死亡率が急上昇し、速度が上がれば上がるほど死亡率は上昇するといわれている。

交通事故総合分析センターでは2007年の歩行者死亡事故率を公開している。時速11〜20キロ帯の死亡事故率は1%未満であるが、時速41〜50キロ帯になると時速11〜20キロ帯の16倍、時速51〜60キロ帯だと31倍にもなる。

危険認知速度 死亡事故率
10km/h以下 0.50%
〜20km/h 0.90%
〜30km/h 1.40%
〜40km/h 5.10%
〜50km/h 14.90%
〜60km/h 28.70%
〜70km/h 44.50%
〜80km/h 48.60%
80km/h超 50.00%

なお「危険認知速度」とは、交通事故の当事者が相手方車両や人を認め、危険を認知した時点の走行速度のことだ。

同センターは、低速事故は中高速事故に比べれば格段に危険度の低い事故であるとしている。ただし低速でも割合は少ないにしろ毎年多くの死亡事故が発生していることは忘れてはいけない。

■警視庁による危険認知速度と致死率のデータ

警視庁でも、危険認知速度と致死率についてのデータを2023年7月に公表している。

出典:警察庁(https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/torikumi/sokudokanri/igi_hitsuyosei.html)

原付以上運転者(第1当事者)で、2020〜2022年の合計のデータだ。危険認知速度が高いほど致死率が高く、規制速度を超過した交通事故は全事故の3.4%、死亡事故では24.7%となっている。

危険認知速度 致死率
10km/h以下 0.20%
20km/h以下 0.30%
30km/h以下 0.40%
40km/h以下 0.60%
50km/h以下 0.60%
60km/h以下 1.30%
70km/h以下 2.90%
80km/h以下 4.20%
90km/h以下 3.10%
100km/h以下 6.10%
120km/h以下 3.40%
140km/h以下 50.00%

■手動運転より安全度が高まったとしたら?

それでは自動運転車が公道を走行する場合、どのように速度設定をしていけばいいのだろうか。従来の人間による手動運転と同様の速度制限でいいのだろうか。

前述したような危険認知速度と死亡率のデータも加味されるべきではあるが、そもそも自動運転車が人間よりも事故率がそもそも低くなり安全度が増すのであれば、人間に課す上限速度よりも高くしてもいいのでは、という議論も将来当然出てくるはずだ。

参考までに、現在の日本では地方自治体を中心に自動運転バスの実用化が進んでいるが、いずれも時速20キロ程度で走行している。安全を確保するためより遅いペースで走っているという状況だ。

時速20キロは、オリンピックに出場するような世界トップレベルのランナーのペースではあるものの、自動車の走る速度としては相当遅い。なお電動キックボードの車道走行時の最高時速は20キロと定められている。

今後の議論の行方に注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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