ライドシェア、応募者の大半「途中離脱」!給与「期待はずれ」、稼働時間「短すぎ」

内定率1.5%、応募2,000人で内定は30人

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タクシー会社限定で運行が認められている自家用車活用事業(通称:日本版ライドシェア)が2024年4月に始動し、3カ月が経過した。タクシー会社やプラットフォームを提供する企業は、ライドシェアドライバーの採用活動に躍起になっている。

しかしライドシェアドライバーの応募はあるものの、稼働条件が合わないなどの理由から採用プロセスの途中で離脱し、応募数に対する内定者は約1.5%のみとなっている状況だという。どういうことなのか、詳しく見ていこう。

■内定者は2,000名中30名

2024年7月29日に内閣府が主導する「第17回 地域産業活性化ワーキング・グループ」が行われた。議題は「自家用車活用事業等のモニタリング・検証・評価について」「自家用車活用事業等のバージョンアップについて」「法制度を含む事業の在り方に係る今後の進め方について」の3つであった。

この会合の中で、モビリティプラットフォーム事業者協議会が「自家用車活用事業に関する実務上の課題について」という資料を提出した。なお同協議会は地域交通DXや移動の人手不足解決を目指す事業者団体で、2024年1月に設立された。モビリティスタートアップらが参画している。

資料では、ドライバー採用における課題として「応募者の多くが、稼働条件が合わないなどの理由から、採用プロセスの途中で離脱」と記されている。2024年7月27日時点で、応募数は約2,000名に達するものの、内定者は約30名にとどまるという。

ライドシェアドライバーの採用に至るまでは、応募後に説明会や書類提出、面接、実技試験などを行い、その後内定となる。内定までに約98.5%が離脱しているということだ。

▼第17回 地域産業活性化ワーキング・グループ
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_05local/240729/local17_agenda.html
▼自家用車活用事業に関する実務上の課題について
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_05local/240729/local01_02.pdf

出典:内閣府公開資料

■時間が合わない、給与が少ないなどが主な理由

応募者のほとんどが採用プロセスの途中で離脱している要因は複合的ではあるが、「働きたい曜日・時間帯の条件が合わない」「稼働時間と給与が期待に満たない」という声が多く寄せられているという。また「提出書類が多くて面倒・時間がかかる」「正社員のため不可」「車がない」などの理由も挙げられているようだ。

現在の日本版ライドシェアでは、地域や曜日、時間を限定してサービスが解禁されている。タクシー需要が供給を上回る観光地や週末などのみに運行を許可されているというわけだ。時間が限られているため副業として稼働できることがメリットのように思われたライドシェアドライバーだが、ほとんどの働き手にとっては稼働時間が少ないことや時間帯が固定されていることはデメリットになっているようだ。

大阪市域交通圏における採用候補者・採用後ドライバーからは、下記のような具体的な意見が出ているという。

■ドライバー確保と営業所単位の台数制限が課題

国土交通省はサービス内容を7月1日からバージョンアップした。対象地域に限り、1時間5ミリ以上の降水量が予報される場合は、これまで日本版ライドシェアのサービス提供ができなかった時間帯においても提供できるようになった。またサービス提供が可能であった時間帯においては、使用可能な車両を増やすことも決めている。

またドライバー稼働における課題として、「雨天時の運行が可能になったものの、24時間前の通知ではドライバー確保の難易度が高い」ということが挙げられている。

現在配車アプリ側での対応が進行中だが、実際に稼働を行う場合には天気予報の確認後、配車アプリ会社・タクシー事業者・ドライバーと段階を踏んで連絡を行う必要があり、営業時間中の対応はギリギリの運用となることが見込まれるという。

ライドシェアドライバーには、稼働の9時間前までに別の仕事をした場合は勤務不可というルールが定められている。そのため、別の仕事をしておらず常時勤務可能なドライバーを相当数雇用していない限り、運用は難しい。24時間前よりも余裕をもった通知が可能となれば、ドライバー獲得の余地が拡大すると想定されている。

出典:内閣府公開資料

ドライバー稼働における課題のもう1つは、「営業所単位での台数制限」だ。現状、使用可能な自家用車の車両数は、事業者単位ではなく営業所単位で設定されている。タクシー事業者が保有する遊休車両を希望するドライバーが多い場合、多くのドライバーは営業所までの移動に電車を利用するため、駅に近い営業所にドライバーが集中することになる。

しかし、稼働できる車両数が営業所単位の許可台数に制限されていることにより、本来稼働可能なドライバーが稼働できない状況が生じていると認識されている。これを解決するために、営業所単位になっている台数制限を事業者単位に変更するという案が提案されている。

出典:内閣府公開資料

■空港や駅に専用の乗降場を設置しては?

そのほか、日本版ライドシェアの利便性向上のために、空港や駅にライドシェア車両の乗降場や配車アプリ用の乗降場を整備するといったことが提案された。その場合、タクシーとライドシェア双方の車両が乗り入れられるように環境を整備すべきとの意見が出ている。

また国交省からタクシー以外の運送事業者(バス、鉄道等)の自家用車活用事業への参入促進を検討する方針が示されているが、その際にはハイヤー事業者や運転代行業者なども含めて、多様な運行主体の可能性を検討すべきだとしている。

■3者にとって便利な運用に

現在のタクシー事業者主体の日本版ライドシェアサービスは、海外で行われている本来の意味でのライドシェアとは全く異なる。

日本でも副業としてフードデリバリーや宅配といったギグワーカーとしての働き方が増えてきた。UberやWoltなどの配達パートナーとして働く場合、全てアプリやウェブサイトで登録やテスト、講習を行うのみで稼働をスタートできる。

その感覚でライドシェアドライバーに応募してきたのであれば、採用プロセスの面倒くささや勤務形態に自由度がないことは、正式応募の大きなハードルになる。客を乗せて走る以上、安全性の確保は最重要項目ではあるが、より柔軟な働き方ができるようなアップデートが望まれる。

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記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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