タクシー会社、ライドシェア潰しで「流し」強化 「内々にお達し」と運転手証言

不要論の醸成を狙った思惑か

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今月解禁されたばかりの「日本版ライドシェア」に関し、タクシー会社がライドシェアの運行エリア・時間帯に合わせ、流しの営業を強化するよう「内々のお達し」を出している、と一部のドライバーが証言した。自動運転ラボの独自取材で明らかになった。

ライドシェアの運行エリア・時間帯は、タクシーの台数が不足しているエリア・時間帯を考慮して決められている。このエリア・時間帯に合わせてタクシー会社が流し営業を強化すれば、ライドシェアが運行していなくても移動したい人が困るケースが減る。

そうすれば、ライドシェアの利便性に気がつく人が減り、ライドシェアに対する支持が盛り上がりにくくなる。要は「ライドシェアってやっぱり必要」と感じる人が増えなくなるわけだ。

ライドシェア解禁に強く反対してきたタクシー業界。業界全体の意向なのかは不明だが、少なくとも一部タクシー会社がライドシェア不要論を醸成する思惑で、流し営業の強化に乗り出した可能性が浮上した。

■ライドシェア許可の背景にはタクシー不足

日本版ライドシェアは、東京都内だと23区・武蔵野市・三鷹市で平日の通勤時間帯(午前7〜10時台)や金曜・土曜の夕方(午後4〜7時台)、土曜日の深夜から未明(午前0〜4時台)、日曜日の日中(午前10時〜午後1時台)に運行が認められている。

タクシードライバーの証言によれば、平日の通勤時間帯に合わせ、特に港区や渋谷区、世田谷区などの都市部を中心に流しを強化するように、内々の通達が出ているという。

午前7〜10時の時間帯は元々、タクシー会社の2交代制の狭間の時間であったこともあり、流しのタクシー台数が少なくなる傾向があった。こうした背景などによってタクシーニーズに応えられていなかった時間帯があったからこそ、ライドシェアが認められた経緯がある。

いずれにしても、タクシードライバーの人材不足という課題が解消されない中では、仮にライドシェアの運行が認められたエリアや時間帯で流し営業を強化しても、結局は別なエリアや時間帯でタクシー需要に応えられなくなるだけで、あまり意味があることとは言えない。

■ライドシェア解禁に反対し続けてきた業界

国土交通省が2024年4月8〜15日の運行データとして公開した資料によれば、東京都内におけるライドシェアの許可事業者数は44事業者で、確保済みドライバー数は389人。この期間の稼働台数は380台で、運行回数は2,308回となっている。

1台1時間あたりの運行回数は約1.5回で、国交省が参考データとして紹介しているタクシーの平均値「約0.7回」を上回っている状況だ。

▼「地域交通における「担い手」「移動の足」不足への対応」及び「自動物流道路・ETC専用化に向けた対応状況」について
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kaigi5/kaigi5_siryou5.pdf

出典:国土交通省

現在の日本版ライドシェアはただでさえ、タクシー会社しか運行主体になれない仕組みになっている。ライドシェア解禁に関してはタクシー会社の反発もあり、政府も一旦こうしたスキームで解禁せざるを得なかったと指摘する声も根強い。

■全面解禁に向けた議論に影響はあるのか

岸田文雄首相は2024年5月の規制改革推進会議に向け、ライドシェア運行をタクシー事業者以外にも認めるかどうか、その方向性や法整備に関するとりまとめを行うよう指示している。

今回、一部ドライバーが証言したタクシー会社の内々のお達しが、こうした全面解禁に向けた議論に少なからず影響を与えることになるのか。引き続き、注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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