営利目的の有償ライドシェアが日本で解禁されたが、あくまで「一部解禁」にとどまり、今のところタクシー事業者しか運行主体になれない。
つまり、アメリカでは配車アプリを通じて個人がギグワーカー的に働くことができるが、日本ではタクシー会社のドライバー求人に応募し、雇用されることが必要となる。展開エリアや時間も限定的だ。アメリカとの差は大きい。
日本版ライドシェアに対し、「まるでコントのようなライドシェア」「規制だらけでとてもライドシェアだと思えない」など、さまざまな声がインターネット上で続々と出ている。
■限定的な解禁となった背景は?
今回、ライドシェアが限定的な解禁となった背景の一つとして、よく指摘されている点の一つが、タクシー業界の反発だ。
タクシー事業者の業界団体である東京ハイヤー・タクシー協会はライドシェアについて、断固反対の姿勢を示してきた。一方、運営主体がタクシー会社に限定される日本版ライドシェアに関しては、断固反対の方針を覆し、賛同の立場に変わったことが報じられている。
個々のタクシー会社がライドシェアの完全解禁(=誰でも自由にギグワーカーとして稼げる状態)に反対する理由はさまざまだ。完全解禁によって安全への懸念が高まるという点を指摘する声も少なくないが、本音ではタクシー事業者の収入悪化を回避したいと思われる。
■共存共栄は可能という指摘も
ただ、タクシーとライドシェアの共存共栄は可能だという指摘もある。
国の規制改革推進会議の「第1回地域産業活性化ワーキング・グループ」で公開された資料によれば、オーストラリアのニューサウスウェールズ州では、2016年にライドシェアが制度化されて以降も、タクシー市場が縮小することはなく、結果として、ドアtoドアの旅客運送マーケットが拡大することになったようだ。
以下がタクシー事業者とライドシェア事業者の売上の推移となっている。少し古いデータではあるが、参考にはなる。
▼諸外国におけるライドシェア法制と安全確保への取り組み|Uber Japan|第1回 地域産業活性化ワーキング・グループ|規制改革推進会議
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_05local/231106/local03_02.pdf
■6月を目処に検討の方向性がまとまる
日本におけるライドシェア制度が今後どのような流れになっていくのかは、いまの日本においてはホットなトピックだ。まずは国は6月を目処に検討の方向性をとりまとめるとしている。その内容に注目したい。
【参考】関連記事としては「ライドシェアとは?仕組みは?(2024年最新版)日本の解禁状況や参入企業は?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)