自動運転バスの事故、原因は「人間」 千葉県横芝光町で踏切遮断機と接触

手動運転中の自損事故

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出典:横芝光町公式サイト

自動運転バスの実証実験中に接触事故が発生した。ただし自動運転バスは「手動運転中」で、けが人や物損はないという軽微なものであった。

接触事故は、2024年3月7日に千葉県横芝光町での自動運転バスの実証実験中に起こった。JR横芝駅近くの踏切で、手動運転中の自動運転車両前方部に踏切遮断機が接触する自損事故であった。詳しく見ていこう。

■横芝光町の自動運転バス導入の取り組み

横芝光町は2024年2月2日から、自動運転バスの通年運行を開始している。この事業は、国土交通省の「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転実証調査事業)」に採択され行われるもので、ソフトバンク子会社のBOLDLYと京葉銀行と共同で実施している。

同町が導入した自動運転バス1台が、1周約5.5キロのルートを走行する。見通しが悪い場所ではカメラを設置し、車内のオペレーターによる視認が難しいエリアの状況を把握する。また車両や歩行者を検知した場合に車内モニターに表示する技術の検証も行うという内容であった。

出典:横芝光町公式サイト

デマンドタクシーの利用者が多いルートを自動運転バスが定期運行することで、デマンドタクシーへ集中していた需要を緩和し、住民が便利で自由に移動可能な公共交通の実現を目指している。

使用車両はティアフォー製の自動運転小型EVバス「Minibus」で、時速35キロ以下で走行する。オペレーターを除く乗車定員は15人、1日10便程度運行し、運賃は無料で誰でも利用可能だ。

出典:横芝光町公式サイト

BOLDLYは全体統括のほか自動走行の事前準備や自社開発の運行管理システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」の提供などを担当する。京葉銀行は、地域の企業と連携したプロモーション施策の企画・運営などを担う。

■人間による安全確認のミスが原因

事故発生時、自動運転バスは踏切に差し掛かる手前から搭乗員による手動運転を行っていた。実証実験中の運用では、踏切手前の一時停止線までは自動運転で走行し、踏切横断は手動運転することになっていた。しかし事故時には、踏切から約100メートル手前から手動介入をしていたという。対向車線の大型車両を回避するためで、対向車を回避後に踏切までの延長が短いことから、そのまま手動運転走行を継続した。

そして本来は踏切の手前の一時停止線で停止しなければならなかったところを、左右の安全を確認しながら徐行し、遮断機の警報音が鳴った時点で停車したという。停止したのが一時停止線を超えていた位置であったため、車両の前方と遮断機が接触したという内容であった。つまり、人間による安全確認のミスが原因であった。

事故発生時の乗客はゼロで、運転手に被害はなかった。踏切遮断機は車両との接触後に通常の位置へ戻っており鉄道への影響はなく、遮断機自体への被害もなかった。ただし自動運転バスのラッピングに若干の擦り傷がついたようだ。

▼公表資料 自動運転バス事故報告(第1報)
https://www.town.yokoshibahikari.chiba.jp/uploaded/attachment/26846.pdf
▼公表資料 自動運転バス事故報告(第2報)
https://www.town.yokoshibahikari.chiba.jp/uploaded/attachment/26863.pdf

■安全対策を強化しすでに運行再開

この事故について、発生直後に警察と現場で実況見分した上で、自損の程度が少ないことから運行自体の再開に問題がないと判断されている。事故発生当日から運行を一旦中止し、安全管理体制を再点検した。その後、自動運転車両に支障がないことを確認し、安全対策をより強化した上で再発防止に務めながら2日後の3月9日から通常運行を再開している。

もし本来の運用通り、踏切手前の一時停止線まで自動運転で走行していたとしたら、事故は起こっていたのだろうか。交通事故の原因は安全確認のミスという人的要因が一番多く、自動運転はそれを解決する手段と言われている。

ただし予期せぬ状況などにおいては、今の開発段階では手動運転の方が安全な場合も多い。手動と自動を混在させた運転方法の場合、どのように役割を分担していくか、切替はスムーズにいくかなどについて、より議論を深めていく必要がありそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、2024年度に一般道20カ所以上で通年運行 政府目標」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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