物流倉庫ロボ開発のRapyuta Robotics、損失大幅増の23億円規模に

日本拠点のチューリッヒ工科大学発ベンチャー

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出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

物流倉庫ロボットなどを開発するRapyuta Robotics株式会社(本社:東京都江東区/代表取締役CEO: モーハナラージャー・ガジャン)=ラピュタロボティクス=の第9期決算公告が、官報に掲載されている。

当期純損失は、前期から赤字額を83%増やし23億6,703万円であった。過去3期の純損益の推移は、以下の通りとなっている。

<純損益の推移>
・第7期:▲6億8,389万1,000円
・第8期:▲12億8,924万9,000円
・第9期:▲23億6,703万2,000円
※▲はマイナス

■決算概要(2022年12月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 4,966,823
固定資産 491,306
資産合計 5,458,130
▼負債及び純資産の部
流動負債 769,966
賞与引当金 13,000
固定負債 1,156,747
株主資本 3,525,916
資本金 100,000
資本剰余金 10,166,932
資本準備金 4,982,998
その他資本剰余金 5,183,933
利益剰余金 △6,741,015
その他利益剰余金 △6,741,015
(うち当期純損失)(2,367,032)
新株予約権 5,500
負債・純資産合計 5,458,130

■スリランカ出身の技術者が日本で創業

「倉庫×自動運転」の有力企業として知られるラピュタロボティクスは、チューリッヒ工科大学発のベンチャーで、2014年に設立された。「ロボットを便利で身近に」をビジョンとし、最先端の制御技術やAI(人工知能)技術を活用した次世代クラウドロボティクスプラットフォームの開発や、ロボットソリューションの開発・導入・運用支援を手掛けている。

同社代表取締役CEO(最高経営責任者)であるモーハナラージャー・ガジャン氏は1980年生まれ、スリランカ出身で、文部科学省の特待生として来日した。久留米高等工業専門学校卒業後に東京工業大学で学士号と修士号を取得、その後チューリッヒ工科大学で博士号を取得している。EU出資の大規模プロジェクト「Roboearth」で、クラウドロボティクス・プラットフォーム「Rapyuta」を考案・開発した。

共同創設者兼CFO(最高財務責任者)のクリシナムルティ・アルドチェルワン氏もスリランカ出身で、東工大で制御・システムエンジニアリング学士号を取得後、コロンビア大学にて経済数学修士号を取得している。その後、野村證券に勤務した。

両者は東工大で出会い、その後再会し、日本をベースにラピュタロボティクスを創業した。現在の従業員数は170人で、世界20カ国以上からエンジニアが集まっているという。東京都江東区の平野本社と木場支社のほか、大阪やインドのベンガルール、米イリノイ州シカゴにも拠点を持つ。

2022年4月に、ゴールドマン・サックスをリードインベスターとして64億1,500万円の資金調達を実施した。これにより同社の累計資金調達額は106億円となり、「ネクストユニコーン」として注目を集めた。

出典:Rapyuta Robotics公式サイト
■自動フォークリフト「ラピュタAFL」など開発

ラピュタロボティクスが開発する「rapyuta.io」は、マイクロソフトのクラウドプラットフォームMicrosoft Azure上で動作する世界初のエンタープライズ品質のクラウドロボティクス・プラットフォームだ。異なる種類の産業用ロボットをクラウドから一括管理し、協調作業やロボットナビゲーション、アプリケーションの配布などを可能にしている。

同社の製品であるピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR」は、作業スタッフと協働でピッキングを行うロボットだ。AIが最短のピッキングルートを提案し荷物の搬送代行も担うことで、ピッキングスタッフの歩行距離を削減することにより、生産性の向上やおよびピッキングスタッフの負荷軽減を実現している。

2023年に入り、既存オペレーションに合わせて導入可能な自動フォークリフト「ラピュタAFL」や、自由にアレンジ可能な自動倉庫「ラピュタASRS」の販売を開始した。

■物流大手からの採用多数

ラピュタロボティクスの製品は、安田倉庫や鈴与、アスクルなど大手物流会社や通販会社で導入されている。機能の拡充も度々行われており、業務負荷の低減や効率化がより進んでいるようだ。

同社は、自律移動型ロボットの認知度と物流業界での利用率を向上させ、自社のピッキングアシストロボットのシェア拡大を推進していくという。今後も大注目の企業だ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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