自動運転技術は、通信回線の接続切れを想定して開発されるべきであるものの、一方、走行中にできる限り通信回線が遮断されないことに越したことはない。こうした視点で注目のプレスリリースがあったので、取り上げておきたい。
台湾のネットワークインフラ機器向けハードウェアベンダーであるCASwellの日本法人、株式会社CASO(本社:東京都千代田区/代表取締役:武田和広)は、5G回線の「切れない接続」を実現する「Peplinkルーター」の活用事例を公開した。
CASOは自動運転やロボット向けにこのルーターが有用であることを強調している。ちなみに、同ルーターはPeplink社製。PeplinkはインターネットロードバランシングとVPNボンディングソリューションを手掛ける米国企業だ。
■安定した信頼性の高いネットワークの重要性
2023年4月に自動走行配送ロボットの公道走行が解禁となり、2027年には国内初となる自動運転レベル5の公道での実証実験が計画されている。これらは遠隔からコントロールや監視を行うため、安定した信頼性の高いネットワークの構成が必須となる。
CASOが提供する通信ソリューション「Peplinkルーター」は、PeplinkマルチSIMルーターの「SpeedFusion」テクノロジーにより複数の回線ボンディングを同時に使用することで、環境の影響を最小限に抑え「切れない接続」を実現しているという。
さらに、Webクラウドプラットフォーム「InControl2」でルーターを遠隔で制御・管理する事ができる。視覚的な通信状況の分析やGPSを用いた位置情報取得、APIへの対応などについて、1つのプラットフォームで各種情報取得を完結させることも可能だという。
■複数回線を用いて安定した通信
Peplinkルーターをaptpod社が提供する高精度車両データ計測ソリューション「Automotive Pro」に用いたユースケースでは、マルチSIMルーターにより複数キャリアの冗長化と帯域不足の解消を実現している。
CASOが公開している動画では、SIM1枚構成の場合は車載カメラ映像の乱れが起きているが、Peplink製「SpeedFusion Engine」を用いたSIM2枚構成では、映像の乱れがほぼなくなっている。特に夜間に威力を発揮しているようだ。
また、電波が悪い山間部での「切れないLTE接続」の検証では、自動車で撮影している映像をPeplink製ルーターと他社製ルーターを通じ拠点側へリアルタイムで伝送し、2つのルーターの通信を比較した。
動画では、Peplinkのルーター「MAX-Transit」の画像が途切れずなめらかであることが確認でき、複数回線を用いて安定した通信を実現できることが証明された。
そのほか、遠隔操作ロボットにPeplinkルーターを搭載し、LTEでの安定接続を実現したことも紹介されている。
■Foxconnと関係性も
CASOは、ネットワークインフラ機器向けハードウェアベンダーとして世界で多くの実績を持つ台湾のCASwellの日本法人として2014年に設立された。ネットワーク機器、コンピューター、周辺機器の輸入・販売、企画、関連製品のシステム設計やソフトウェア開発などを手掛けている。
なおCASwellは、Foxconnグループ内で産業用向け機器のODM・OEMを担当しているEnnoconn社のグループ企業になっている。
自動運転の開発が進み、より高度なデータ収集や膨大なデータ送受信が必要となっている現在、CASOが提供するソリューションはより必須になるだろう。これからますます採用が進みそうだ。
【参考】関連記事としては「Foxconn、自動運転EVの受託生産開始へ!米NVIDIAと提携」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)