全日本空輸株式会社(ANA)と京浜急行電鉄株式会社、横須賀市、横浜国立大学の4者は2020年2月12日までに、さまざまな理由で移動にためらいのある人々に提供する移動サービス「Universal MaaS」(ユニバーサルMaaS)の社会実装に向けた連携を開始すると発表した。
「ユニバーサル」は日本語では「誰にでも、万人(共通)の」といった意味がある単語だ。その単語を使った「Universal MaaS」は、障がいなどの理由で移動にためらいのある人々に快適な移動サービスをシームレスに提供しようという試みだ。
利用者と交通事業者、自治体、大学が介助内容などをアプリを使って共有し、連携することでストレスのない移動を提供するという。社会実装開始の目標は「2020年度内」だ。
■車いす利用者などの声をプロトタイプアプリに反映
この4者は2019年6月から産官学共同プロジェクトを開始し、羽田空港第2ターミナルから横須賀美術館までの移動について実証実験を重ねている。実証実験は車いす利用の人などを対象に行われ、4社で構築したUniversal MaaSのプロトタイプアプリには実証実験で得られた意見などが反映されているという。
プロトタイプアプリには「お客さま用アプリ」と「サービス提供者用アプリ」の2つがある。「お客さま用アプリ」は車いす利用の人向けで、バリアフリーで乗り継ぎ可能な経路ナビとして機能する。具体的には、羽田空港から目的地までの経路検索や駅構内や施設周辺のルート案内が提供されるという。
「サービス提供者用アプリ」側では、補助などが必要な人の位置情報や属性情報の閲覧ができ、介助を要する方が空港や駅などに接近したことをアプリで通知する仕組みになるという。
ちなみに実証実験のパートナーとして、報道発表では7社が紹介されている。交通とまちづくりに関するコンサルティング業務を手掛けるLocaliST社がアドバイザーとして参画しているほか、羽田空港でロボット技術の活用を目指すHaneda Robotics Labは実証フィールドを提供しているようだ。
そのほか、車いす用データの提供で貢献しているのが一般社団法人「WheeLog」で、システム開発を支援する企業としては、パソナテックやNEC、NTTドコモ、ヴァル研究所などが名を連ねている。
■4者によるUniversal MaaSの今後に注目
ANAと連携する3者は、それぞれMaaS分野に積極的に取り組んでいる。京急は「京急アクセラレータープログラム」として、スタートアップとのオープンイノベーションで新たなモビリティサービスの創出に取り組んでいる。
横須賀市は京急やドコモなどの協力の下で「横須賀MaaSシティ実現コンソーシアム」による取り組みを進め、横浜国立大学はヘルスケアとモビリティを結びつける「ヘルスケアMaaS」の展開に取り組んでいる。
国土交通省の公表資料によると、高齢者は移動において身体的にも心理的にも負担を感じていることが多いという。特に車いすを使用している人は外出時の負担が大きく、階段や段差、極端な人混み、狭い通路など移動上においてさまざまな困難に直面する。
4者によるUniversal MaaSは、MaaSサービスの設計においてこうした課題を解決することも視野に入れている。今後の取り組みに注目したい。
【参考】関連記事としては「MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説&まとめ」も参照。