タクシー配車アプリ「S.RIDE」を展開するソニー系のみんなのタクシー株式会社(本社:東京都台東区/代表取締役社長:西浦賢治)は2019年11月5日、事業を開始してから現在までの実績や現在の取り組み、今後の事業の方向性などについて紹介する事業説明会を実施した。
日本では現在、複数のタクシー配車アプリが事業展開を加速させている。そんな中でみんなのタクシーはどのように戦略を掲げているのか。事業説明会の概要を紹介し、その一端を探ってみよう。
【参考】関連記事としては「【インタビュー】安い手数料、我々は「タクシー会社目線」 ソニー系配車アプリ「S.RIDE」、みんなのタクシー社がローンチ 西浦社長に聞く」も参照。
記事の目次
■みんなのタクシー社の概要
みんなのタクシー社は2018年5月に準備会社として設立され、その後の同年9月、AI(人工知能)を技術を活用した新たなタクシー関連サービスの展開に向け、事業会社に移行した。その時点での出資比率は、ソニーとソニーペイメントサービスが45%、グリーンキャブなどのタクシー会社5社が55%と公表されている。
その後の2019年4月初旬にまず広告事業として、総合PR会社のベクトルと組んでタクシー後部座席IoTサイネージサービス「THE TOKYO TAXI VISION GROWTH」を開始し、同月中旬にはタクシー配車アプリ「S.RIDE」と決済代行サービスもスタートさせている。
みんなのタクシーに参画するタクシー会社5社の保有タクシー台数は東京都内で1万台を超え、まず東京に注力する形で配車アプリ事業をスタートさせた格好だ。
■「配車」「広告」「決済」…各事業の実績は?
事業説明会では「配車事業」「広告事業」「決済事業」それぞれの実績などが紹介された。
配車事業:1日当たりの配車件数が18倍以上に
実績は2019年9月と2019年4月の比率で紹介されており、まず配車事業では1日当たりの配車件数が18倍以上に伸びたという。また、2019年9月時点の平均利用単価は迎車料金込みで2755円であることも説明された。
広告事業:1カ月当たりの広告売上は4倍に
広告事業の実績に関しては、1カ月当たりの広告売上は約4倍に伸び、「2019年9月以降は満稿が継続中」と説明されている。
決済事業:1カ月あたりの利用件数が15倍以上に
みんなのタクシーが提供している「ネット決済/S.RIDE Wallet」の利用実績については、1カ月あたりの利用件数が15倍以上になっているという。発表によれば、2019年9月時点のネット決済比率は約64%となっているようだ。
【参考】関連記事としては「ソニー系のタクシー配車アプリ「S.RIDE」、東京でサービス開始 車両数は1万台規模」も参照。
■東京以外にも展開、AI需要予測もスタート
事業説明会ではそのほか、東京以外の横浜などでタクシー配車サービスを今後導入していくことも明らかにされた。2019年度内に展開予定エリアのタクシー事業者と連携を進め、サービスの提供開始を目指す考えだ。
また事業説明会が行われた同日から、大和自動車交通のタクシーに搭載されている「ドライバー用タブレット」に需要予測アプリを搭載し、商用サービスを開始することも発表された。大和自動車交通はみんなのタクシーに参加しており、ほかのタクシー会社についても順次対応をしていくようだ。
この需要予測アプリにはソニーのAI技術が搭載されており、乗車点予測や長時間乗車率、空車動態表示、おすすめルート表示、特需発生表示などの機能も実装されていることが特徴であるとしている。
また将来的に、ソニーのセンサーやLiDARの搭載によって得られるセンシングデータや運転手の運転記録などからドライバーへ注意喚起や警告を行う支援ツールを構築する計画も明らかにされた。
■【まとめ】MaaS時代に備え、事業提携や資本業務提携も加速
このほかにも事業説明会では、東日本旅客鉄道(JR東日本)とのMaaS領域での事業提携や、KDDIやNTTドコモ、ゼンリンデータコム、帝都自動車交通との資本業務提携についても発表された。
みんなのタクシーは「事業提携・資本提携により、事業の成長を加速させることに加えて、来るべきMaaS時代を踏まえた投資とビジネスモデルの構築に取り組んでいきます」としている。
同社の次なる打ち手にも注目していきたい。
【参考】関連記事としては「【最新版】タクシー配車アプリや提供企業を一挙まとめ 仕組みも解説」も参照。