ドライバーレスの自動運転車が、ハリケーンにより立ち往生した人を避難させることができるかもしれない。
米国の研究者らはテキサス州ヒューストンの海岸をハリケーンが直撃した場合、自動運転タクシー(ロボットタクシー)が自分の車を持たない人々をどのように救助できるかについて、スーパーコンピューターを用いて調査した。
その結果、ハリケーンなどの有事の際の避難手段としてロボットタクシーを活用することが効果的であると分かったという。しかもスパコンでの分析の結果、5人乗りの車両が最適解であることも判明した。
▼【論文】Leveraging shared autonomous vehicles for vulnerable populations during pre-disaster evacuation
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/03081060.2024.2360678
▼Escape From Hurricanes with Driverless Cars|テキサス大学のテキサス先端計算センター(TACC)
https://tacc.utexas.edu/news/latest-news/2024/09/11/escape-from-hurricanes-with-driverless-cars/
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■自動運転車がハリケーンから市民を救う
自動運転車がハリケーン災害に有効であるという研究を行ったのは、米テキサス大学オースティン校の交通工学の専門家であるKara Kockelman教授が率いる調査グループだ。彼らは大学にあるスーパーコンピューターを使い、ハリケーン発生時の避難途中の交通の流れや渋滞のシミュレーションを行った。
研究チームは、ヒューストンが最も強い「カテゴリー5」のハリケーンに襲われ、風速が時速155マイル(約249キロメートル)を超え、かつ高潮が通常の潮位より18フィート(約5.5メートル)以上高くなった場合に必要となる避難方法を検討した。ハリケーン上陸までの間、ヒューストンの複雑な道路網の交通渋滞を考慮しながら、安全な場所まで救助を必要とする人々をどのようにピックアップし移送する最良の方法を研究したという。
その結果、壊滅的なハリケーンがヒューストンを襲った場合、数百台のドライバーレスの自動運転車を活用することで、取り残された社会的に弱い立場の人々を安全な避難所まで避難させる手助けをする可能性があるということが分かった。
自動運転車は人々をピックアップし、バスステーションで降ろしてから、さらに内陸のハリケーンシェルターまで運ぶことができる。ただしKockelman教授は「低密度で、より田舎にある環境では、2〜3時間以内に移送を行うのは難しいだろう」とコメントしている。
■「5人乗り自動運転車」がベスト
研究では、最初に200台の自動運転車でシミュレーションを行い、最終的には1,200台の車両からなる自動救助隊に拡張したという。しかしスーパーコンピューターのモデルは自動運転車の隊列が大きくなるにつれ、追加車両による成果が減少することを予測したようだ。
異なるサイズの車を使用した場合の影響についても調査されている。それによると、5人乗りの車両が最も機敏に動くということが分かった。5人乗り車両は大型車両と比べ、交通渋滞の中で素早く加速することができるためだ。
■災害の多い日本でも活用が期待される
ヒューストンをカテゴリー5のハリケーンが襲った場合、約90万人に避難命令が出される可能性がある。米国ではハリケーン被害が深刻な問題となっている。
シミュレーション結果は、現状はハリケーン対策として実用化されていない。しかし研究者たちはテキサス州の避難指導者たちと協力して研究を進めた。ヒューストンだけでなく他のエリアにもこの避難計画を応用することができ、さらに山火事が発生した際などにも自動運転車は活躍が期待できるという。
ドライバーレスの自動運転車だからこそできる災害援助がある。日本でも災害発生時のドローン活用などが検討されている。地震や豪雨が多発している日本でも、自動運転車は活躍が見込めそうだ。
【参考】関連記事としては「自動運転車であれば、感染地域との往復のハードルが下がる」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)