ライドシェアの労働条件「政府関係者に言うな」 タクシー会社、運転手に指示

規制改革推進会議WGの資料から判明

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国の規制改革推進会議のワーキング・グループが公開した資料で、日本版ライドシェアの運営が唯一認められているタクシー業界の事業者の一部が、雇用したドライバーに対し、「政府関係者には労働条件を聞かれても言ってはならない」と指示していたことが、2024年8月6日までに明らかになった。

日本版ライドシェアに関しては、週20時間しか働けないことで十分な収入が得られず、「ワーキングプアを強いる仕組み」などと運転手から批判の声が上がっており、今回のようなタクシー会社による「箝口令」(かんこうれい)についても、波紋を拡げそうだ。

■地域産業活性化WGで公開された資料

日本版ライドシェアの正式名称は「自家用車活用事業」で、日本版ライドシェアはタクシー会社のみが展開することが許されている。

冒頭紹介した資料は、規制改革推進会議のワーキング・グループの一つである「地域産業活性化ワーキング・グループ」の第17回WGにおいて、事務局資料として公開されたものだ。

▼第17回 地域産業活性化ワーキング・グループ
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_05local/240729/local17_agenda.html
▼資料1-3-2 事務局 提出資料【自家用車活用事業の状況】
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_05local/240729/local01_03_02.pdf

「資料1-3-2 事務局 提出資料【自家用車活用事業の状況】」のPDF7枚目において、「自家用車活用事業のドライバーの声(ヒアリング結果)」が紹介されており、その中で労働条件を漏らさないよう指示された経験があるドライバーの声が掲載されている。

■「労働条件を聞かれても言ってはならない」

そのドライバーの声は、具体的には以下の通りだ。

政府関係者には労働条件を聞かれても言ってはならないと箝口令がしかれている。

また、以下のような声もあった。日本版ライドシェアの求人については、基本的には時給水準などが求人情報に掲載されているケースが多いが、詳細については簡単には明かしてくれないタクシー会社もあるようだ。

労働条件などは、ネット上に公開されず電話でも教えてくれない。説明会に行かないと教えてもらえない。実際に軽自動車でライドシェアを始めようとしていたところ、普通車でないとダメと説明会で初めて言われ断られた。

出典:地域産業活性化ワーキング・グループ公開資料

ちなみに日本版ライドシェアの求人に関しては、応募者の大半が途中離脱し、あるケースでは実際に応募があった約2,000人のうち内定は約30人足らずで、内定率がわずか約1.5%という数字となっている。

その理由としては、ワーキング・グループ公開の資料では「応募者の多くが、稼働条件が合わないなどの理由から、採用プロセスの途中で離脱」と記されている。こうした大量離脱も、労働条件をしっかりと公開していればそもそもの応募者が一定程度絞られたため、起きなかったと考えられる。

■政府・与党の動きに注目

日本版ライドシェアに関しては、海外でUberやDiDiが展開しているライドシェアとは異なり、一部給与は歩合でもらえるものの、労働に関する自由度も高収入の可能性も低く、ドライバーからは悲鳴とも言える声があがっている状況だ。

こうした日本版ライドシェアの仕組みは、このまま残り続けるのか。それとも規制撤廃による全面解禁が行われ、Uber EatsやWoltといったフードデリバリーのように、ギグワーカー的に働くことができるようになるのか。政府・与党の動きに引き続き関心が集まる。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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