アメリカの自動運転業界において、理数系人材が就くエンジニア職の平均年収がかなり高額になっている。調査データを分析すると、その額は平均約1,600万円にも上ることが明らかになった。
自動運転技術の開発競争が本格化すると同時に関連求人も増加しており、高度な技術や知識を持つ人材の給与水準はどんどん上がっている。
中でも、エンジニアやソフトウェア開発者といった「STEM(Science:科学、Technology:技術、Engineering:工学、Mathematics:数学)」関連の人材を企業は求めている。
■STEM職は約1,200万〜2,000万円
この調査データは、米国のハイテク業界連合「Chamber of Progress」により発表されたものだ。レポートは、コンサルタント会社の英Steerと、戦略会社である米Fourth Economyによって作成されたもので、給与は2022年のデータを参照している。
STEM職、つまり理数系職種の一般的な賃金は、80,000〜127,000ドル(約1,200万〜2,000万円)となっている。間を取ると日本円で約1,600万円だ。
この職種では、工学やコンピューターサイエンスの学士号もしくは修士号・博士号と、自動運転技術関連の資格が必要であり、一般的なOJT(オンザジョブトレーニング)は必要とされていないことがほとんどだ。つまり、即戦力となることを期待されているということだ。
■職種別の年収データ
他の職種の賃金は、製造関連職で38,000〜45,000ドル、運輸・販売職で36,000〜63,000ドル、設置・メンテナンス・修理に関する職種で45,000〜58,000ドル、一般的なビジネス・サポート職で66,000〜97,000ドルとなっている。OJTは無い場合もあるが、基本的には必要とされている。
なおこの賃金データは、各職業グループ内で25%から75%の間で働く労働者の年収を基準に算出しているようだ。
職種で比較すると、圧倒的に理数系職種が高年収だ。その代わり、高学歴とハイレベルなスキルが要求される。ただし、これまでは理数系職種の採用条件として最低でも学士号以上が必須であったが、最近は学歴よりもスキルを重視する企業が増えているという。
これは自動運転業界に限らず、米国の全産業において、今後5年間でさらに149万件の仕事が大卒でない労働者にも解放される可能性があるという。スキル重視ということで、ますます実力主義の世界になっていきそうだ。
■最も多い理数系職種、全体の40.6%
レポートでは、自動運転関連職種がどんな割合になっているかについても触れられている。
一番大きいシェアを占めるのが、理数系職種で40.6%となっている。具体的には、設計やエンジニアリング、テスト関連の職種だ。自動運転産業が成熟するにつれて、その割合はますます高くなると予想されている。
次に多いのは一般的なビジネス・サポート職で27.2%だ。製造関連職10.5%、設置・メンテナンス・修理に従事する職種10.3%、運輸・販売職8.4%と続く。今後自動運転車の量産が本格化するにつれて、製造関連やメンテナンス関連の職種の割合が高まると言われている。
今回の紹介したデータは、以下のリンク(PDFの17〜19枚目あたり)から確認できる。興味がある人はぜひ参照してほしい。
▼Opportunity AV : How Many and What Type of Jobs Will Be Created by Autonomous Vehicles?|Chamber of Progress
https://progresschamber.org/wp-content/uploads/2024/03/Opportunity-AV-How-Many-and-What-Type-of-Jobs-Will-Be-Created-by-Autonomous-Vehicles.pdf
※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。
【参考】関連記事としては「自動運転、米国だけで最大45万人超の雇用創出!今後15年間で」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)