英ベントレー、自動運転レベル3を見送りか 手動切り換えを危険視

エイドリアンCEOが懸念示す

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高級車メーカーの英ベントレーは、自動運転の初期商用水準となる「レベル3」の展開を見送る方針のようだ。

同社のエイドリアン・ホールマークCEO(最高経営責任者)が自動運転レベル3について「the most risky phase of autonomous」(自動運転における最もリスクの高い段階)という見解を示したことを、海外メディアが報じている。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル3とは?(2024年最新版)」も参照。

■ホンダやメルセデスはレベル3を展開済み

自動運転レベル3は日本語では「条件付き運転自動化」と表現される。「高速道路」や「渋滞時」といった特定条件下で作動できる自動運転システムの水準のことを指し、ホンダが世界で初めて商用展開し、メルセデスやBMWもそれに続いている。

現在、自動車業界において最も競争が激しい運転支援システムは自動運転レベル2であり、それは「ADAS」(先進運転支援システム)に相当する。そして、その次の段階がレベル3の技術だ。

このレベル3に関し、一足早く業界をリードしようとホンダやメルセデスが開発に力を入れているわけだが、なぜベントレーはレベル3の展開を見送ろうとしているのだろうか。それは、レベル3が「中途半端」な自動運転システムと言えなくもないからだ。

ホンダが発売したレベル3乗用車「新型LEGEND」=出典:ホンダプレスリリース

■レベル3は「注意力の回復」が必要に

レベル3では特定条件下で自動運転システムが作動し、ドライバーは前方から目をそらし、ハンドルから手を離すことも許され、スマートフォンを操作したり読書をしたりすることも可能になる。

しかし、自動運転システムの作動要件(※これをODDと呼ぶ)から外れた場合、人間が運転を自動運転システムから引き継ぎ、道路状況に注意しながら運転操作を行う手動運転に戻らなければならない。

エイドリアンCEOはこうした「注意力の回復」が必要になるレベル3について、危険だと表現しているという。そのため、レベル2の上位互換のシステムとして安易にレベル3を開発するのは避けるべきという考えのようだ。

【参考】関連記事としては「自動運転とODD」も参照。

■レベル3への指摘は過去にも

実はレベル3に関しては、これまでにもその安全性を危険視する声が少なからず出ている。例えば、スウェーデンのボルボカーズは過去にレベル3を安全上「不確実」な技術と指摘したことがあるし、米フォードもレベル3の開発に消極的な姿勢を示したことがあった。

今後レベル3をめぐる開発がどのように進んでいくのか、注視していく必要がありそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義や実用化状況は?(2024年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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