ヤマハ発動機グループのヤマハモーターパワープロダクツ株式会社(本社:静岡県掛川市/代表取締役社長:池谷智及)の第100期決算公告(2022年12月現在)が、官報に掲載されている。同社は「自動運転ゴルフカー」とも呼べそうな車両を開発している注目企業だ。
当期純利益は、前期比16.1%減の15億1,000万円であった。過去3期の純利益の推移は以下の通りだ。
<純利益の推移>
・第98期:4億3,800万円
・第99期:18億100万円
・第100期:15億1,000万円
記事の目次
■決算概要(2022年12月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:百万円)
▼資産の部
流動資産 10,133
固定資産 5,278
資産合計 15,411
▼負債及び純資産の部
流動負債 6,245
(うち賞与引当金)(296)
(うち製品保証引当金)(987)
固定負債 570
(うち退職給付引当金)(340)
負債合計 6,815
株主資本 8,585
・資本金 275
・資本剰余金 955
・・資本準備金 955
・利益剰余金 7,354
・・利益準備金 68
・・その他利益剰余金 7,285
・・(うち当期純利益)(1,510)
評価・換算差額等 10
・その他有価証券評価差額金 10
純資産合計 8,595
負債・純資産合計 15,411
■国内シェア1位のゴルフカーメーカー
1944年設立のヤマハモーターパワープロダクツは、国内シェアナンバーワンのゴルフカーメーカーとして、車体の開発設計から製造、インフラ整備などの導入支援に至るソリューションビジネスを展開している。同社のゴルフカーは、ガソリンエンジン仕様とEV(電気自動車)仕様の2タイプがある。
同社は1996年に電磁誘導式ゴルフカーを発売して以来、自動運転技術で国内のゴルフ場をリードしてきた。2018年には、電磁誘導式モデルに、業界初のステレオカメラとRFIDシステムを採用した自動運転サポートシステム「エフィビジョン」を搭載した。それにより加速・減速や自動停止など、より細やかな自動操作による安全性の向上と快適な乗り心地を実現したという。現在はゴルフ場だけでなく、工場や倉庫、遊園地、公道などでも活用されている。
同社が提供する自動運転機能オプションには、定められたコースを自動運転する「電磁誘導式」と「エフィビジョン」がある。
電磁誘導式では、埋設された電磁誘導線を感知し、設定されたルートを自動走行する。また埋設されたマグネットやRFIDを感知して自動停車したり、センサーなどが信号を感知し自動で増速・減速無人回送を行ったりといった機能がある。
エフィビジョンでは、ルート上に設置されたRFIDタグを通過する際にゴルフカーがコースデータを受信する。コース情報を把握し走行する際の距離のズレを補正することにより、正確なゴルフカー運用が可能になる。さらに、エフィビジョンシステムが走行路状況を監視しており、カメラに映った画像から、走行に支障をきたす物体を検知した場合に警告音を発する。また減速検知範囲であれば減速、停止検知範囲であれば自動停止を行うことができるという。
■自動運転プラットフォーム搭載車両を販売開始
ヤマハモーターパワープロダクツ、ティアフォー、マクニカは、自動運転関連における研究開発に必要なハードウェア及びソフトウェアを搭載した電動小型低速車両「アカデミックパックPRO」の販売を2019年1月に開始した。
これは、ヤマハモーターパワープロダクツのゴルフカー(ランドカー)をベースに、ティアフォーの自動運転ソフトウェア「Autoware」と各種センサー・AI(人工知能)を搭載可能とする自動運転モジュール「AI Pilot」を標準搭載した自動運転開発用電動小型低速車両だ。マクニカは、車両の販売とサポート窓口を担当している。
■自治体の実証実験などに多数の採用実績
ヤマハモーターパワープロダクツの自動運転車両は、高知県四万十市や福井県永平寺町、山形県高畠町など多数の地方自治体の実証実験や実運行に活用されている。
主に地方都市で移動手段の減少が深刻な問題になってきている中、同社のランドカータイプの車両の採用が進んでいくか、注目だ。
※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。
【参考】関連記事としては「自動運転が可能な車種一覧(2023年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)