オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)がこのほど公開した「自動運転レベル3」(条件付き運転自動化)に関する調査によれば、自動運転レベル3で走行中のドライバーの行為として「目を閉じて休憩すること」が、比較対象の中も危険であることが分かった。
■「目を閉じて休憩する」危険性
この調査では、自動運転レベル3での走行を再現するシミュレータを使って行われた。ちなみに自動運転レベル3では「手をハンドルから離せる」が、システムの要求に応じて「いつでもシステムから運転を引き継げる状態」であることがドライバーに求められる。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル3とは?(2023年最新版)」も参照。
調査では、自動運転中という想定の下、ドライバーにさまざまな行為をさせた状態で、自動運転システムがドライバーに手動運転への切り替えを要求し、最も反応が悪い行為を探った。
具体的には、ドライバーに以下などの行為をさせたという。
- ビジネスメールを書かせる(「仕事中」という想定)
- ビデオを見せる(「娯楽中」という想定)
- 目を閉じて休憩させる(「休息中」という想定)
その結果、目を閉じて休憩させているドライバーが、最もシステムからの要求に対する反応が遅かったという。調査を担当したNeng Zhang博士は「次いで、ビジネスメールを書かせたドライバー、ビデオを見せたドライバーの順番で反応が鈍かった」としている。
■累計走行距離が少ないドライバーほど…
調査の結果、ほかにも判明したことがある。それは、運転以外の行為を長くすればするほど、システムの要求に対する反応が鈍くなるということだ。
さらに、運転経験の浅いドライバーほど反応が遅くなることも明らかになった。ここでいう「運転経験」は免許取得からの年数ではなく、免許を取得してからの走行距離を示すという。
Zhang博士ら調査チームは「オーストラリアで自動運転レベル3の車両が展開される前に、規制によって注意力が散漫になる行為に対処しなければならない」と指摘。今回の調査の意義については「より危険な行動を特定して規制することで、自動運転中の安全度を高めることができる」とした。
■各国でのルール作りに有用な調査データ
自動運転レベル3は、すでに日本やアメリカ、ドイツで展開されている。オーストラリアで行われた今回の調査は豪州国内のみならず、各国でのレベル3に関する安全確保のルール作りの際に役立ちそうだ。
今回の論文は以下のURLから内容を確認することが可能だ。
▼Is driving experience all that matters? Drivers’ takeover performance in conditionally automated driving
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022437523001056
【参考】関連記事としては「自動運転、読んでおきたい論文15選」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)