空飛ぶクルマ開発を手掛けるブラジル企業Eve Air Mobility(イブ・エア・モビリティ)は、eVTOL(電動垂直離着陸機)の風洞実験を終えたことを2023年5月24日までに発表した。
この実験では、2026年に運航開始が予定されている同社のeVTOLのスケールモデルが使用され、スイスのルツェルン近郊で行われたという。
■「風洞実験」とは?
風洞とは、人工的に空気の流れをつくるためのトンネル形の装置のことで、これを用いて風の流れなどを計測・評価する実験のことを風洞実験という。航空機などのモビリティは空気中を移動する際に気流の影響を受けるため、実際の飛行試験を行う前に、この装置を使いて飛行中の機体の効率や飛行特性、性能などといった状態を調べる必要がある。
今回Eveが行った風洞実験の主な目的は、機体の胴体やローター、翼、尾翼、その他の表面を含む構成要素が飛行中にどのように機能するかを調べ、検証することであったという。
■米で上場済みのEve、4人乗りeVTOLを開発
Eveは、ブラジルの航空機大手EMBRAER(エンブラエル)のビジネスプログラム「Embraer-X」の中のイノベーションプロジェクトとして2017年にスタートした。その後2020年に分社化し、Eve Air Mobilityが設立された。2022年5月には、米ニューヨーク市場に上場している。
EveのeVTOLは4人乗りで、100%電力で稼働し、航続距離は約100キロだ。ヘリコプターや他社のeVTOLに比べ低コストで、騒音を最小限に抑えた車体となっている。
この機体は、すでに2021年6月に英国の民間ヘリコプター会社であるHalo Aviationから200機の受注を受けている。その他、米国の民間航空会社や英国の軍用・航空機メーカーのBAEシステムズなどからも受注を受け、受注合計数は2,000機近くになるようだ。
■「重要な技術的なマイルストーン」
今回の風洞実験完了について、同社CTO(最高技術責任者)のLuiz Valentini氏は「風洞試験の完了は、eVTOLの開発を続ける上で重要な技術的なマイルストーンとなる」としている。
さらに「この開発フェーズで得た情報は、生産ツールや適合するプロトタイプに取り組む前に、eVTOLの技術的ソリューションをさらに改良するのに役立った。我々の目標は、さまざまな都市で用いられる空気力学的で効率的なeVTOLを設計・製造・認証することだ」と語っている。
Eve Air Mobilitは空飛ぶクルマ業界で抜きん出た存在になれるか、注目だ。
▼Eve Air Mobility公式サイト
https://eveairmobility.com/
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは?(2023年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)