Amazon配送ロボ「これからが本番」 試験中止でピッカー真っ二つ

NewsPicksのコメントを分析してみた

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先日、米アマゾンが自動配送ロボット「Scout(スカウト)」実用化に向けた取り組みを凍結した記事を配信したところ、大きな反響があった。NewsPicksでは多くのコメントが寄せられた。

注目度の高い自動配送ロボットについて、どのような意見・感想が寄せられているのか。ポジティブ・ネガティブ双方の意見を取りまとめてみた。

▼記事
https://jidounten-lab.com/u_38012
▼NewsPicksでのコメント
https://newspicks.com/news/7702460

Amazonが開発に力を入れていたScout=出典:Amazonプレスリリース
■ドアtoドアの利便性では人間に勝てない?

アマゾンは、配送ロボットの取り組み中止について「顧客のニーズに合っていなかった」ことを理由に挙げている。この件に対し、記事では「荷物を受け取るために家の前まで出て、ロボットの中から商品を取り出すという自動配送ロボットの仕組みが利用者から不評だった可能性」に言及した。

この部分に反応したピッカーが非常に多かった。「ユーザーからすれば単に配達する人が人間からロボットになっただけで利便性に変化はない。自転車より遅くドアも開けられず、階段も登れないロボットが速度やドアツードアの利便性で勝ることはない」「特定の情報処理速度の速さ・正確さはAIに任せられるが、単純労働と思われているエッセンシャルワークの機械化は難しい」「面白いアイデアだけどはじめから無理があった」などのネガティブな意見が寄せられている。

また、アマゾンスタッフの動画をもとに、「(ロボットが)家の前に到着しても、家の人が気付かなければ15分くらい普通に待ってしまう。人間のデリバリーであれば1時間に30~40位のデリバリーが可能になるから、非効率以外何物でもない」とする声もあった。

■「人間の代わり」ではうまくいかない?

カリフォルニア州に拠点を置くENOTECH Consulting CEOの海部美知氏は、シリコンバレーなどで実証されるロボットの様子について「各地で多くのメーカーが大々的に試験運用したが、いずれも惨憺たる結果に」と評する。

道の真ん中で止まったり、道路を渡るのが遅く車の流れを遮ったり、植え込みに突っ込んだりしていたそうで、「学生の部活レベル」と手厳しい感想を述べている。

ソニーベンチャーズ/ソニーグループシニアインベストメントダイレクターの鈴木大祐氏は、洗濯の機械化を例に挙げ、「ロボットを本当に社会に適用するには、人間のやり方を代替するロボットではなく根本から仕組みを変える必要がある。人間のやり方を代わりにやる方針のロボット事業はあまりうまくいかないのではないかと感じる」としている。

置き配やポストイン、手渡しなど、従来人が行っていたタスクをロボットがどこまで代替することができるのか――が大きなポイントとなりそうだ。

■自動配送ロボットはこれからが本番だ!

自動配送ロボットを顧客ニーズにマッチさせるのは厳しいと見る意見がある一方、「届ける家庭に専用の宅配ボックスなどを設置すれば問題ないような気がする」「社内敷地内の書類・備品・部品を運ぶロボットとしてなら使えそう」「アームをつければ置き配くらいまでやれそう」といった声もある。

また、ディグラム・ラボ代表取締役の木原誠太郎氏は「トライ&エラー。昔描かれていた未来は直ぐ近くにある」、ナウキャスト取締役会長の赤井厚雄氏は「全く悲観する必要はない。要はロボットの性能(精度)を左右するAIが弱いというだけ」とそれぞれ意見した。まだまだ発展途上であり、進化の余地が十分残されていることを示唆している。

このほかにも、「遠い未来を考えるとロボットになってない方が不思議なので、必要な投資」といった声もあった。

■「ロボット×置き配」という可能性

これまで人が担っていた宅配のタスクは、主に①配送ルートの選定②配送先に向けた運転③配送先で荷物を降ろし、玄関口まで移動してポストインや置き配、手渡しを行う――となる。

このうち、①と②は人が機械(クルマ)やコンピュータを操作するタスクであり、AI・コンピュータで代替しやすい領域と言える。

一方、③は人が直接体を動かすタスクで、やや複雑な作業となる。手渡しとなると、受取人の存在も考慮しなければならず、機械・コンピュータによる「完全自動」は困難と言えそうだ。

では、置き配やポストインは不可能かと言えば、そんなことはない。宅配ロッカーのような専用設備が必要となるが、これをロボットや自動運転車が近付ける場所に設置し、連携可能にすればよいのだ。

ロボットからロッカーへの荷物の移動は、ロボットアームや可動式コンベアなど、いろいろ考えられる。こうした連携は、すでに実証が行われている。

ラストワンマイル配送の自動化を掲げるエストニアのCleveronが2018年に発表したロボット宅配システム「robot courier」は、自動運転車が無人で荷物を配送し、自宅に設置された専用ロッカーにロボットアームで投函する仕組みだ。

道路環境が日本と異なるため場所を選びそうだが、Youtubeに動画もアップされているので、ぜひ拝見してもらいたい。

■現行のロボットも有用であることは確か

また、現状の自動配送ロボットは使えないのか?と言えば、そんなこともない。飲食デリバリーなど、注文から短時間で宅配するケースだ。在宅が前提となるため、注文後1時間以内など比較的早く配送される場合、直接荷物を受け取る抵抗は小さいのではないだろうか。飲食以外にも、近隣スーパーからの宅配など需要は見込めるはずだ。

また、高層ビル内や高層マンション内などで配送を担う取り組みも進められている。マンションでは、エントランスまで配送された荷物をロボットが受け取り、エレベーターに乗って各戸の玄関前まで届けることができる。

さまざまなユースケースをあてはめれば、既存のロボットもしっかりと活躍できる場面があるのだ。

■【まとめ】新たな取り組みの着手にも期待

置き配や宅配ボックスの需要が伸びる昨今においては、現状の自動配送ロボットの仕組みは確かに利便性が低いのかもしれない。翌日以降に配送されるEC商品などは特にそうだろう。

ただ、こうした顧客ニーズとの乖離も、実証を行うからこそ細かく分析することが可能になるのだ。どういったケースで拒絶され、またどういったケースで容認されるのか。宅配ロッカー連携に向けた道路環境にはどのようなものが必要か――など、学ぶことは多い。

アマゾンも、これまで蓄積してきた技術と知見を無駄にするような真似はしないはずだ。無人配送システム構築に向け、新たな取り組みに着手することを期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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