自動運転バス、自治体の負担「ゼロ円」 茨城県境町の注目モデル

「ふるさと納税」と「補助金」を活用

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出典:デジタル庁/茨城県境町(※クリックorタップすると拡大できます)

茨城県境町は自動運転バスの運営を「町の持ち出しゼロ」で行っているようだ。2022年4月13日にオンライン開催されたデジタル庁の「デジタル交通社会のありかたに関する研究会(第1回)」で提出された資料から明らかになった。

以下の資料におけるQ&Aの欄において、「運営コストはどうしてるの?」というQに対し、「ふるさと納税と補助金を活用しています。町の持ち出しは0になる境町モデルによる運営方式です」と回答している。

▼茨城県境町におけるNAVYA ARMAを活用したまちづくりについて(茨城県境町町長 橋本様)
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d8994158-9dc0-4f5c-89cb-a59ee381ed4d/48f0ae61/20220413_meeting_mobility_outline_07.pdf

一般的に、こうした維持管理費を含む運営コストは全額自治体が負担していることが多いが、境町ではふるさと納税と補助金を活用することで、町の持ち出しがゼロになっているという。

ちなみに補助金とは、内閣府の「地方創生推進交付金」などのことで、3年間で総額1億5,000万円の交付が決まっていると説明されている。

■自動運転バスの経済効果は7億円

境町の自動運転バスは、2020年11月に第1ルート、2021年8月に第2ルートの運行がスタートしている。2022年4月19日時点で累計乗車人数は8,024人、累計走行便数は7,433便にのぼる。運行を開始してから無事故を継続中だ。

境町の自動運転バスはテレビや新聞・メディアを通じて話題になり、県外企業の本社機能の境町への移転や、東京からの来訪者の増加などにより、経済効果は約7億円に上るという。

2022年3月31日時点で、公的機関団体や民間企業、大学・研究機関などによる累計視察件数は121団体、累計視察人数は491人に上る。

■「誰もが生活の足に困らない町」へ

境町は5年後に「誰もが生活の足に困らない町」を掲げている。自動運転バスの運行が始まる前には「渋滞が起きるのでは」「路上駐車があると走れないのでは」といった住民からの懸念があった。しかしいざ運行が始まると理解が進み、協力的な住民が増えたという。

このほか冒頭触れたように、運営コストについて町の持ち出しがないことも、町民の受容性を高める一因であるかもしれない。境町の自動運転バスに関する取り組みに、引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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