米ニューヨークのマンハッタン区内で、渋滞を緩和するためにタクシーやライドシェアサービスの運賃に「混雑料金」を上乗せする制度が始まることになった。「渋滞税」とも呼ばれそうな仕組みで、集められたお金は公共交通の改善に使用される。
ニューヨーク市内ではもともと慢性的な渋滞が発生していたが、ウーバーやリフトといったライドシェアサービスの台頭によって最近悪化が著しい。ニューヨーク市内のタクシー台数は1万3000台前後だが、ライドシェアの登録車両は10万台以上と過剰供給状態になっており、渋滞発生の大きな原因となっている。
交通状況の悪化によって営業効率が落ち、生活を追い込まれたタクシードライバーが自殺する事態も発生しており、2018年8月にはライドシェアサービスの新規ライセンス発行が1年間停止された。
こうした状況を受け、ニューヨーク市は渋滞時のタクシーとライドシェアに混雑料金を加算することで、根本的な渋滞の解決を図る。今までタクシーやライドシェアを利用していたユーザーが料金の安い公共交通機関に移行すれば、車両が減るため道路が混まないという考え方だ。
■上乗せされた料金は公益会社に
上乗せされた料金はニューヨークの独立公益会社MTAに集められる。徴収される財源は年間440億円になると見込まれ、地下鉄の遅延改善などに充てられるという。地下鉄の利便性が上がればユーザーが利用しやすくなり、さらなる渋滞改善にもつながる。
現在日本では法律の問題がクリアできていないため、営利目的のライドシェアは現在は営業できない。しかし地方都市の交通弱者問題を解決する手段や、観光地の移動手段として注目が集まっており、必要に迫られれば規制が緩和される可能性もある。
東京や大阪などの大都市でライドシェアが普及すれば、マンハッタンのような慢性的渋滞が発生する可能性は十分ある。何気なくタクシーに乗ったら、いずれニューヨークのように「渋滞税」が加算されるということもあるかもしれない。
【参考】関連記事としては「ライドシェアは渋滞を軽減するどころか悪化させる アメリカで話題の予測」も参照。